【専門紙誌5社共同企画】各紙誌の視点で見る東日本大震災からの復興 先端技術で収益性高め 農村ニュース


手放しで運転できる田植機など先端技術が披露された福島イノベーションコースト構想による実演会の様子(2018年撮影)

自立的・持続的な発展目指す

 平成23年3月11日に発生した東日本大震災。多くの人的被害とともに、農林水産関係の被害も甚大だった。農水省の調査によると、岩手、宮城、福島の3県を中心に2兆4436億円の被害が発生した。

 復興に向けた取り組みの一つとして、特筆すべきが「福島イノベーション・コースト構想」だ。震災と原子力災害により働く場を喪失した浜通り地域等の復興を実現するためには、新たな産業基盤の創出が求められることから、自立的・持続的な産業発展の実現とその効果の県全体への波及を目指し立ち上げられた国家プロジェクトだ。2017年5月の福島復興再生特別措置法改正法の成立とともに「福島イノベーション・コースト構想」が法的に位置づけられ、取り組みが加速した。構想では、2030年ごろを目標年度とし、「あらゆるチャレンジが可能な地域」「地域の企業が主役」「構想を支える人材育成」を柱とし「廃炉」「エネルギー・環境・リサイクル」「医療関連」「ロボット・ドローン」「農林水産業」「航空宇宙」の六つを重点分野として、令和元年に目指すべき「青写真」を作成。それをもとにさまざまな取り組みが進められている。具体的に農林水産業についてみてみたい。

 令和元年の青写真における目指す姿として農業および畜産業については、先端技術等を活用した収益性の向上、多様な担い手の確保・育成を図ること等による被災地全体の早期の営農再開を挙げている。

 具体的に見ると、現状(令和4年)は営農再開率(営農再開面積/営農休止面積)は浜通り全体で46%、またスマート農業技術導入経営対数(大規模稲作および園芸)は635件にまで拡大。さらなる営農再開のため、農地の集積や大区画化等を進めるとともに、ロボット技術やICT等を活用した先端技術の開発・実証や社会実装に取り組んでいる。

 その一例として挙げられるのが、南相馬市の株式会社紅梅夢ファームだ。稲作を中心に野菜や菜の花を生産する農業法人で、2017年法人化。スマート農業の導入に積極的で農水省が令和元年度から始めた「スマート農業実証プロジェクト」にも参画、「担い手と労働力の確保が著しく困難な条件下で非熟練労働力を活用しつつ高レベルで均質な農産物の生産と規模拡大を実現する技術体系の実証」に2年間取り組んだ。実証では無人自動運転のロボットトラクタのほか、田んぼに水を張る作業を遠隔で可能なほ場水管理システム、ドローンを用いた農薬散布、食味や収量を計測できるコンバインなどの機器を導入するとともに、それらの機器からデータを収集、営農支援システムで作業状況や進捗(しんちょく)度を可視化するなどの取り組みを実施した。

 こうした取り組みの結果、米については、品質は1等比率が向上、収量もおおむね目標を達成できた。また、収益性は生産費が目標の1万2千円(60キログラムあたり)を下回るなど成果があったという。

(農村ニュース)


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