台風15号、19号、豪雨による災害で被害にあわれた皆さまに心よりお見舞いを申し上げます。
日本全国を旅して取材することをなりわいにしております私は、どの地域の被害ニュースを聞いても、お世話になっている方々のお顔が思い浮かび、胸が痛みます。
このタイミングだからこそ、ひとつご提案があります。
「被災地へのお見舞い観光」という考え方を広く定着させていきませんか。
10月24日発売号の「週刊新潮」で「被災地観光」という見出しの記事が掲載されました。それはたとえ被災していなくても、被災地のイメージがついた地域にはお客さんが来なくなってしまうという窮状を訴えながら、いま宿泊するとお得な情報なども添えてありました。私は、「そんな時だから地域の人との忘れられない交流がある。これぞ旅の醍醐味(だいごみ)。だから訪ねて下さい」とコメントを出しました。
このコメントを出した背景として、本連載でもたびたびつづってきましたが、もう一度、被災地に対する欧米の成熟した考え方を記したいと思います。
2004年12月26日に起きたスマトラ島沖地震は死者22万人、負傷者13万人と伝えられる大惨事でした。クリスマスシーズンだったこともあり、犠牲者の中には日本や欧米諸国からの観光客も含まれていたといいます。
私は翌年の2月に、大打撃を受けたビーチリゾ―ト地のプーケットに、タイ国政府観光局によるプレスツアーの一員として訪ねました。
この時の私は、震災があったばかりの地へのプレスツアーをタイが国として開催する発想を斬新に感じ、ツアーに参加してみたのです。
プーケットの現地に行ってみると、がれきは散乱し、津波で流されてきたごみもそのままの状態。惨事から回復した様子はありませんでした。ただ、そこで見えた光景は、欧米人が美しい海とビーチで遊ぶ姿―。
欧米からの観光客は、口々に「来ることが応援だろう」、そんなふうに言うのです。観光業への理解と敬意があり、強く共感しました。
なぜ日本人は災害の後に観光を取りやめてしまうのだろう、自粛してしまうのだろうと考えた時に、遠慮ゆえなのだろうと思い至ります。「大変な思いをされた方がいる所に遊びに行くのは不謹慎。申し訳ない」。これが正直な気持ちでしょう。優しさだと思っております。
しかし私は、痛々しい傷跡が残るビーチリゾートで、それら全てを理解した上で楽しそうにする欧米からの観光客の姿をやはり見習いたい。
「行くことが応援である」という考え方を違和感なく、日本の皆さんにうまく伝えたいと思い、自然災害があるたびにメッセージを発しています。
願わくば、観光業の皆さまには窮状を訴えるだけでなく、観光に訪れた時のメリットや特典などを明確にしていただけますと、マスメディアはそれを伝えてくれるはずです。
マスメディアが普通に「お見舞い観光」を語るようになれば、その考え方が大勢の方々に根付いていきます。
地道な方法ではありますが、自然災害に襲われ、観光業の皆さまが苦境に陥った時に、支えてくれるお客さまを増やしたい。ひたすら、それを願っています。
(温泉エッセイスト)