昨年、毎週土曜日に放送される日本テレビの人気番組「マツコ会議」に「つぼみの会」のメンバーの若女将さんたちがご出演されていました。
取材でお世話になってきました「つぼみの会」の皆さんのご登場ということで、放送を楽しく拝見しました。
「つぼみの会」の皆さんには、2013年に雑誌「オール讀(よみ)物」(文藝春秋)の「若女将のぶっちゃけ座談会」でご協力をいただいて以来のお付き合いです。身内のように感じている女将もいますので、私自身が出演する番組を見る以上に、手に汗握る緊張感をもってテレビの前に座りましたが、そんな私の心境はよそに、女将の皆さんの堂々たるや―。
辛口で人をいじるマツコ・デラックスを飲み込むような勢い、あっぱれ! 「つぼみの会」代表の群馬県塚越屋の塚越左知子さんに至ってはマツコの一歩先をゆくトークを繰り広げておられ、あんぐりと口を開けたマツコさんの表情が私には忘れられません。
ただ同時に、マツコさんの人の話を巧みに引き出す話術も思い知りました。女将たちが話していた逸話のほとんどは、私も座談会で聞いていましたので、知っていたからこそ、マツコさんがより面白くしよう、視聴者の記憶に残るようにという計らいが手に取るように分かりました。マツコさんは愛情深い方ですね。
まだ仕事を始めた20年以上前は、恐れ多くて、女将を前にすると、緊張のあまり言葉が上ずってしまうこともありました。一瞬のスキもない、何事にも完璧な女性に見えたからです。それに「女将」は“女の将軍”と表記するんです、そりゃかないません。
ですが女将の皆さまとのお付き合いをさせていただきながら、私自身も年を重ねました。いまでは女将に敬愛の念を抱いております。
一般的には、絢爛(けんらん)な着物姿でお客さまにごあいさつするイメージでしょうか。でも、それはほんのごく表面上の姿。水面下では七転八倒。ドタバタあり、ハプニングあり、涙あり、笑いあり。予測不可能な出来事を難なくこなしていく強さを持つ女性、それが女将です。
女将になる経緯もさまざま。旅館の娘に生まれたから必然的に女将になる方と、夫が旅館の跡取り息子だったから女将になる方、突如、運命の巡り合わせで女将になる方もいます。
「女将」とは特殊なカテゴリーで、職業というより生き方なのかもしれません。唯一無二の存在。だからこそ希少価値がある。
旅館経営はさぞかしご苦労の連続だと思います。自然災害によって簡単に倒産に追い込まれる事例も聞きます。客室数を増やし続け、100室以上ある大型宿泊施設が一見好調のようで、実は経営困難であるとも耳にします。もし、ご主人が観光協会の役員などされていたら外での仕事が多忙で、宿の切り盛りは女将さんに任され、必然と大黒柱に。さまざまな困難を愛嬌(あいきょう)と度胸で切り抜ける。その策はそれぞれの人生経験から得られるものであり、女将の数だけスタイルがあります。
「女の一本道」を地で行く“女将”がとてもいとおしく感じています。いつか「女将」をテーマに本を書いてみたいと思っています。
(温泉エッセイスト)