去る2月7日に「第9回VISIT JAPAN大使の集い2020in四国」が愛媛県松山市で開催されました。
第1部のセミナーでは澤功大使が開会宣言。主催者あいさつは上園政裕四国運輸局長がなさり、来賓あいさつとして久保成人日本観光振興協会理事長、金子正志日本政府観光局理事からお言葉を頂戴しました。
基調講演は「我が国の観光政策」と題して観光庁国際観光課の小林太郎課長が観光政策に加え、昨今の新型肺炎にも触れて話して下さいました。
VJ大使はリレー講演、パネルディスカッションへと続き、私もパネラーとして登壇しました。ディスカッションのテーマは「四国はひとつ」。
四国はインバウンドの伸びしろがあるという前提で、訪日外国人客を伸ばしていくかが課題です。それには、四国が一つにまとまってこそです。
これまでは「四国はそれぞれひとつ」という言葉に象徴されるように、愛媛県、高知県、徳島県、香川県は独自の歩みを遂げてきたそうです。そこで四国は、何をベースにしたら地域連携ができるかが議題です。
パネラーのお一人で、関西で使用できる周遊券「スルッとKANSAI」を考案した横江友則大使は「四国をつなげるのは鉄道。観光施設の割引が付いた1日乗車券を発行するのも一つの策」と提案されました。
そして四国がつながる一つのキーワードとして「お遍路さん」が出てきました。四国にはお遍路さんにもてなす“お接待”という共通語があります。ちなみに香川県では“お節介”と言うそうですが。この“お接待”は、「私の代わりにお参りしてください」という気持ちを込めて、困っているお遍路さんを助けるという意味があり、ひいては功徳を積むこと、無償の精神だそうです。四国中で外国人を“お接待”していけたらということで会は終わりました。
翌朝、道後温泉本館で体を目覚めさせました。朝湯はしゃきっとします。
その後、伊予鉄さんのご厚意で道後温泉駅からJR松山駅まで「坊っちゃん列車」に乗車。あの夏目漱石も乗ったというこの列車は、松山の路面を走る渋い蒸気機関車です。
その後、松山駅から伊予大洲駅まで「JR伊予灘ものがたり」に乗車しました。女性乗務員の心からの笑顔も、列車から広がる伊予灘の壮大さも、全てが脳裏に焼き付いています。でも、最も心打たれたのは、地元の方が手を振ってくださったその姿でした。
乗車後、JR四国の方から「緊張感をもって乗車ください」とユーモアを交えながらご説明いただきましたが、地元の方が手を振るので、乗車しているわれわれは手を振り返してほしいということでした。九州新新幹線完成の際のCMで、開通した新幹線に向かい地元の方が手を振る映像は今も記憶にありますが、まさか、似た光景を四国でライブで体験できるとは。
海沿いの道を列車と並行して走る車の中からも、運転手は無理でも同乗者が手を振ってくれる。工場の作業員も、気付けば両手を振り上げる。五郎駅では、タヌキの着ぐるみ姿の駅長さんが敬礼してくれ、タヌキの帽子をかぶった小さな男の子もニコニコと。
「感動します」と涙ぐむ大使もいましたし、私も満たされた気持ちで列車を降りました。これも“お接待”の一つなのでしょうね。
その後、大洲市が取り組む画期的な古民家再生事業についてお話を聞かせていただきました。臥龍山荘では大工の匠の技を目の当たりにしました。
このたびのVJ大使の集いは、四国運輸局、四国ツーリズム創造機構、JR四国の皆さまのご尽力によるものです。深く感謝を申し上げます。
(温泉エッセイスト)