高速バスにおいて本格的なレベニュー・マネジメント(RM)が定着するには、オペレーション上の課題に加え、価格管理の機能をバス事業者が持っていないことも課題となる。
以前、高速バスの運賃は認可制であり、総括原価方式によって決定していた。2002年以降は徐々に自由化が進んだが、「既存」高速乗合バス事業者においては、せいぜい、期間限定のキャンペーン割引や早期購入割引の設定など、限定的な活用にとどまっていた。
そのため、今でも、運賃改定を行う際や新しい割引運賃を導入する際などは、共同運行会社同士で協議を重ねることになる。実現まで1年や2年かかることも多い。
前年までの実績や予約の進捗状況をチェックしながら、随時、運賃を変動させるような仕組みにはなっていない。本格的なRMを実現するには次の2点が必要だ。
まず、柔軟に運賃を変動させるための社内体制づくりである。共同運行会社間で、どちらか一方の会社に、または方向(上り便・下り便)別にそれぞれの会社に、運賃変動の権限を与える。
事前に、金額の幅や設定方針などのストラクチャーを合意しておく必要がある。また、専任のレベニュー・マネジャーを配置するのは困難であろうから、予約センターなど現業部門にその機能を任せることになろう。
そのうえで、過去の実績や本年の予約進捗などのデータを分析し、最適な運賃額を決定するノウハウを育てる必要がある。航空業界などを対象にレベニュー・マネジメント・システム(RMS)提供で実績のある会社が、高速バス向けの廉価なRMSを開発(当社が協力)しており、このようなシステムを導入すると共に、現業部門や本社の若手に思い切って権限を委譲するべきである。
保守的な社風が多い「既存」高速乗合バス事業者では、価格決定という重要な機能を特定の誰か(特に若手)に任せることには抵抗があろう。だからこそ、RM導入というのは、運賃戦略の話それだけにとどまらず、彼らにとって象徴的な改革になりうると考えている。
(高速バスマーケティング研究所代表)