2007年2月18日早朝、大阪府吹田市で長野県からのスキーバスがモノレール高架橋の橋脚に激突、1人が死亡し25人がけがをするという重大事故が発生した。
運転を担当していたのは当時21歳の、当該バス事業者の社長の長男(「大型2種」運転免許を取得できるのは21歳からなので、バスの運転免許を取得して間がないはず)。
亡くなったのは社長の三男で16歳。当然、三男はバスの運転はできなかったが、乗客や発注者である旅行会社に対し「交替で運転している」と見せかけるために車掌として同乗していたという報道もある。
事故の直接の原因は長男の居眠りであるが、前日までの勤務状況に重大な法令違反が判明したため、社長らも有罪判決を受けた。
また、スキーツアーを企画実施した旅行会社も、極めて低い運賃額で運行を発注していたうえ、出発日直前に発注台数を上積みし、無理な運行を強いたとして社会から非難を浴び、最終的には経営破たんに追い込まれている。
極めて重大な事故ではあったが、これはスキーバスの事故であり、直接的には高速ツアーバスとは関係がない。だが、高速ツアーバスの成長を快く思っていなかった「既存」の高速乗合バス事業者らは、ここぞとばかりに高速ツアーバスへの非難を強めた。
むろん後者は前者の派生であり、両者の事業モデルは似ているし、当該旅行会社は高速ツアーバスの企画実施も行っていたので全く無関係ではない。
だが、「旅行会社が貸切バス事業者に値引きや無理な運行を押し付けるから安全性に疑問がある」と非難するなら、スキーバスはもちろん、温泉などへ向かう一般的なバスツアーさえ非難の対象となるはずだ。
それにも関わらず、なぜ、「既存」各社があえて高速ツアーバスだけを禁止するような発言を重ねたのか、その点については後でご説明する。だが、その非難は思わぬ結果をもたらした。国土交通省が取りまとめた事故の再発防止策の中に、「ツアーバス連絡協議会」を設置するという項目が差し込まれたのである。
(高速バスマーケティング研究所代表)