2013年から完全施行された「新高速乗合バス」制度の目玉は二つだ。一つは、「貸し切りバス型管理の受委託」である。非常に複雑な制度ゆえ詳細は割愛するが、高速バス事業者は、運行の一部を貸し切りバス事業者に委託することができる。
それも、「どの路線をどの貸し切りバス事業者に委託する(可能性がある)」という内容で国の許可を得ておけば、実際に何月何日のどの路線を、どの事業者が運行するかについては、個別に事前の届け出などは不要となった。
高速バス、特に長距離。夜行路線において極端に需要が集中する年末年始などの帰省ラッシュ時は、修学旅行など貸し切りバスの需要は減少する。余裕のある貸し切り車両を高速バスの増便として使用することで、効率的に需要の繁閑に対応するのである。
航空は鉄道に比べ座席供給量が少なめで、帰省ラッシュ時などは運賃が高騰する上に予約を取りづらい。航空と競合する東京—四国などでは、既存高速バス路線を統合(経由便化)し運行を効率化することで路線を維持した上で、繁忙日には「管理の受委託」を上手に活用し、最大の座席共有を行うことで、収益最大化を図ることができる(現実には多くのハードルが残っているが、乗り越える以外に路線維持の方策はない)。
もう一つの目玉が「幅運賃」である。これも一言でいうと、事前に届け出などを行っておけば、高速バスの運賃はその金額設定も、また「上げ下げ」も自由だということだ。
これは、航空業界などで定着しているレベニュー・マネジメント(RM)の手法を、まずは高速ツアーバスが導入し、それを全ての高速バスに適用すべく制度を改正したものだ。大雑把に言えば、繁忙日は値上げし、閑散日は値下げにより乗車率を上昇させるということだ。RMを上手に活用すれば、収益性が向上することは、さまざまな業界で証明されている。
これらの制度は、「既存」高速バス事業者のこれまでの思考形態と合わず拒否反応を示す事業者がいるが、彼らのために作った制度であり、上手に活用してほしい。
(高速バスマーケティング研究所代表)