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これまで、高速バスや貸し切りバスの営業上の課題についてご説明してきた。今号から、バス業界全体に共通の、運営上の最大の課題である乗務員不足の問題について考えたい。
筆者は、バス乗務員専門の求人サイト「バスドライバーnavi(どらなび)」を監修している。事業計画の立案段階からお手伝いしているほか、同サイトが年に数度開催する転職イベント「どらなびEXPO」では、毎回、求職者向けに講演を行い、彼らと交流して本音を聞き出すようにしている。本稿は、その過程で得た知見がベースとなる。
なお、人手不足の問題は、バス事業に限らず、本紙読者にあたる多くの業界にも共通であろう。整理すると、人手不足の要因は三つの領域に分類できる。
第1に、現在において、この国、特に内需型のサービス産業が抱える構造的な問題である。第2に、当該業界が抱える構造的な問題。第3に、個別の事業者の努力や工夫の不足である。
第1の背景、つまりこの国全体が構造的に人手不足の状態にあることを正しく理解しなければ、業界あるいは個別の会社の課題解決につなげることはできない。
そのうえで、第2の背景、つまり業界の課題については、業界横断的な自主的な取り組みや「どらなび」のようなサードパーティ、あるいは事業者団体の努力によって解決する必要がある。行政の力を借りるケースもあろう。
第3の背景については、個別の事業者が乗り越えるしかない。特に乗合バス(路線バスや高速バス)事業は、長い間、地域独占的な事業免許制度のもとにあり、採用活動においてベンチマークすべき相手も少なかったことで、結果として成功事例や具体的な手法が共有されない理由ともなっている。
一方、中小規模の貸し切りバス事業者においては、採用専任の担当者はおろか人事部門、人事戦略といったものがそもそも存在しない会社が多い。
もっとも、乗合、貸切、双方のこのような問題点は、筆者の専門である営業(マーケティング)の領域でも共通であるが。
(高速バスマーケティング研究所代表)