以前にも書いたが、「国際空港から観光地への直通高速バスが運行される」と聞くと、まるで、観光客で満員のバスが毎日やってくるような錯覚をする人がいる。だが、「観光客で満員」なのは貸し切りバスを使うバスツアーである。毎日安定して催行されるわけではない。一方の高速バスは原則として毎日、安定して運行されるが、常に満席とはいかない。
都市間の高速バスであれば、「地元の人の都市への足」として安定した需要を見込めるため、短・中距離の昼行路線では、30分間隔など高頻度運行を行うことができる。
それに対し、空港から観光地へ直行する高速バス路線を設定しても、1日に1~2便など限られた便数しか設定できず、利便性は低い。先週ご説明したように、1日に1~2便程度だと、航空機が遅延した際の乗り継ぎの不安も大きい。
だからこそ、空港からの直行便を無理して作るよりも、国際空港最寄りの大都市と地元を結ぶ高速バス路線をより便利にする方が、現実的なのだ。
例えば、FITに人気の高い「昇竜道フリーきっぷ」は、中部国際空港~名古屋~高山~白川郷~金沢・富山の区間を、高速バスや空港連絡バスを乗り継いで旅行するための、外国人向け企画乗車券である。海外の旅行会社で購入し引換証を渡された外国人旅行者は、中部空港に到着後、空港内の窓口でパスポート確認とともに本乗車券と引き換えを行う。
その券を乗務員に提示すれば対象のバスに乗れるので、多くの旅行者は空港から名古屋市内まで空港連絡バスで移動し市内で宿泊する。翌日以降、高山への高速バスに乗車するのだが、この路線は予約座席指定制であり、満席のことが多い。そのため、同路線を運行する名鉄バスは、中部空港内で(乗車券の引き換えとは別の窓口になる点が惜しいが)翌日以降の名古屋~高山線の座席予約を行えるよう、空港内の窓口に高速バスの座席管理端末を設置した。1日1往復だけの使いづらい直通便を運行するより、よほど旅行者にニーズに合致した施策だといえる。
(高速バスマーケティング研究所代表)