ドライブレコーダー(ドラレコ)をバス乗務員の人事評価に活用するに際しての課題は、技術的な問題ではなく、評価を行う管理者側の準備の問題である。
まず、管理者に大きな負担が発生する。営業所で人事評価を行う側(営業所長や副所長ら)が、日常業務に加え、「ドラレコ」動画を確認してそれをもとに運転技術や接客態度について評価を行うのは、全乗務員を対象とすると大変な時間が必要である。
「添乗モニター」が有効なのは、バスの専門家でなくとも点数化可能なチェックリストを使用するため、人件費の低いアルバイトでも対応できるからである。日常業務で多忙な営業所の管理者らに、残業して動画をチェックさせるというのはリソースの無駄である。
ドラレコ動画をチェックして、接客の状態(「決められたマイク放送を行っているか」など)についてリストに基づき機械的に点数をつけるだけならアルバイトで十分だ。しかし、個人情報保護の観点もあり、ドラレコ動画は管理者ら社内の限られた者しか閲覧できないというようなルールを決めているバス事業者が多く難しい。
全乗務員についてチェックする必要はあるが、サンプル抽出した「少しずつの時間」で十分である。管理者が評価を行うしかないのであれば、せめて、サンプル抽出ルールを会社側で決め、少ない負担で公平に評価できる仕組みを作るべきだ。
また、評価を行う者は日常業務において運行管理者の役割にあるが、この点数化に際しては、接客態度や運転の基本動作などについて、あくまで客観的に評価を行う必要がある。急な残業への協力度合いといった、運行管理者として日常業務を行う上での乗務員の印象とは切り離し、客観的に評価を行うべきであるが、その旨を事前に管理者に徹底しなければ、主観的な評価が混ざってしまう恐れがある。
ドラレコを評価に活用するなら、管理者が評価しやすい環境づくりと、評価者としての教育を十分に行うことが大前提となる。
(高速バスマーケティング研究所代表)