今後求められるバスサービスの類型のもう一つが、言うまでもなく着地型ツアーである。
もっとも、「発地型から着地型へ」と言われ続けながら、いまだ大きなうねりとならない理由が、ビジネスモデル(お金のもらい方、回し方)にあるのは、高速バスの観光客対応が進まないのと共通だ。
従来のパッケージツアー(バスツアー)は、特定の日のみ催行するが、その日については高い乗車率を確保する事業モデルだ。一方、旅行者自身が、興味関心のある着地型ツアーを組み込んだオリジナルの旅程を楽しむためには、着地型ツアーが、安定して(理想は「毎日」。せめて「夏期は毎日」とか「通年で毎週何曜日」など)催行されることが前提になる。
従来のパッケージツアーは、特定の日のみ催行し、しかも日によって季節によってコース内容をどんどん変えていく狩猟民族的なビジネスモデルである。
逆に、着地型ツアーは、いわば農耕民族的であることが求められる。旅行者はよほど特別なケースを除くと、着地型ツアーの催行日にわざわざ合わせて旅程を作成したりしない。だから、着地型ツアーは、原則として毎日催行とすることで、どの日程でその都市に滞在しても同ツアーに参加できる環境をつくる必要がある。
ところが、毎日安定して集客するために万人受けするコース内容にしてしまうと、着地型の本来の趣旨と矛盾し、「それならパッケージツアーの方が手軽でいいではないか」という評価になってしまう。大きなジレンマである。
「高速バス(移動)とバスツアー(観光)のハイブリッド型商品」においても共通だが、安定した催行と、多様で個性的なコース内容という相反する命題をどう両立させるかが、今後の焦点となろう。
わが国のツーリズム産業が市場ニーズに向き合うには、旅行流通のあり方の変化とともに、この、相反する命題を両立させるようなビジネスモデルを見つけ出す必要があるのだ。
(高速バスマーケティング研究所代表)