「地域の足を守る」という使命感で「自画像」を描くようになった路線バス業界は、今日、国や自治体による公的補助で赤字を埋めている状況である。
1960年代から70年代にかけ、年間輸送人員が約100億人であった路線バス事業は、80年代から縮小を始め、現在では約40億人にまで縮小している。通勤通学などの需要増加に、都市部では地下鉄網など鉄道インフラの整備が追いつき、農村部では自家用車普及により公共交通の役割が縮小したからである。
一時は、付帯事業の黒字で「本業」たる路線バス事業の赤字を埋め合わせる「内部補助」が盛んに言われた。しかし、特に地方部においては人口減少も始まり、路線バス事業の赤字は内部補助で乗り切れる次元を超えてしまった。そこで、現在の「赤字だが重要な路線(系統)については、その赤字額を税金から補填(ほてん)する」というスキームになった。
ただ、国や自治体の財源に限界があることは明らかで、永続するスキームとは思えない、というのが、多くの路線バス事業者の現状である。
それにも関わらず、現状を変える動きは見られない。二言目には「バス業界は保守的だから」と言い訳が聞かれるが、その常套句は、筆者には言い訳や卑下というよりは「変わろうとしないのは自分(自社)だけではない」と自らを安心させているようにしか聞こえない。
それは何もバス業界だけの話ではないだろう。「ウチの会社(業界)は保守的だから」という言い訳、いや精神安定剤は、この国の多くの産業に共通で使われているのではないか。
急増する人口と円安に守られ、恵まれた時代を過ごした戦後の日本。そして新興国の台頭や人口減少という壁にぶち当たり成長が止まったのにも関わらず、「昭和に見た夢」の続きを見られまいかと淡い期待をしながら寝たふりをし続けているのが今のこの国だとすれば、バス業界はこの国の象徴であり、逆に約10年、先を歩んでいるともいえる。
だからこそ、この業界を変えてみせたい。
(高速バスマーケティング研究所代表)