【教育旅行特集】「世界遺産の国境離島」SDGsを学ぶフィールド(長崎県・五島市)


「釣りの聖地」で行う船釣り体験(市内全地区)

 九州の西の端、長崎から西に約100キロに位置し、11の有人島、52の無人島で構成される五島市。

 古くは遣唐使の寄港地、海外貿易の拠点として栄え、またカトリック信仰の地として数多くの教会が点在し、さらに倭寇や空海の伝説が残り、城郭や武家屋敷など歴史文化遺産も豊富であることが五島市の魅力です。

 ■五島市体験交流協議会

 五島市体験交流協議会では、豊かな自然と多様な農林漁業の営み、歴史や文化を生かした体験交流型教育旅行の受け入れを行っています。

 「五島感動しま旅!」と銘打った一連のプログラムは、地域に暮らす人の生業や生活を一緒に体験したり、地域の自然や歴史をともに楽しんだりといったそこでしか味わえない、「ほんもの体験」にこだわっています。

 市内全域で最大100軒400人までの受け入れが可能です。

 ■SDGsへの取り組み

 本協議会では、SDGsの各目標について、深く考えるきっかけとなるような体験プログラム構築に取り組んでいます。

 例えば、崎山地区の「浮体式洋上風力発電と船釣り」では、海岸から約5キロの洋上に設置された浮体式洋上風力発電施設である風車を、実際に漁船に乗って間近で見学します。海上約100メートルにそびえるその姿は、見るものを圧倒します。風車見学の後は、周辺海域で船釣りを行います。風車をつなぐ係留チェーンは漁礁の役目も果たし、生息する魚種が増えていることも確認されています。残念ながら、風車のすぐ近くで釣りを行うことはできませんが、ぜひ釣りの聖地、五島での船釣りを体験してください。

 また、風車の管理の一部を担当している潜水会社の講話は、地元住民との共同作業など、環境に配慮した活動を知る貴重な経験となります。このように、楽しみながら、「(7)エネルギーをみんなにそしてクリーンに」「(14)海の豊かさを守ろう」について関連付けて考えるきっかけを提供できるプログラムとなっています。

 もう一例として、岐宿地区の「潜伏キリシタンの歩み 教会見学と巡礼道トレッキング」を紹介します。カトリック信仰の地として数多くの教会が点在する五島市の特性を生かしたトレッキングコースで、スタートとゴールは、カトリック教会となっています。約1時間半のコースは、舗装のされていない自然歩道で、適度なアップダウンがあり、ゴール近くでは、パッと視界が開け、水ノ浦の美しい海に疲れも吹き飛びます。

 このように五島の自然を味わえる気持ちの良いコースではありますが、実は、キリシタン弾圧当時に入牢させられたキリスト教徒が別の牢へ移動するために、縄で体を縛られながら歩かされた道でした。当時に思いを寄せ、現在でも年に1回、信者の方が巡礼道として歩いています。スタートの説明でこの話を聞き、追体験するつもりで歩くと、全く違う感想を持つようになります。「(10)人や国の不平等をなくそう」「(16)平和と公正をすべての人に」といった、大きくて捉えがたい目標も、五島の歴史と、いまも息づく生活を通して、学んでいただく機会になると期待しています。

 今後もこういった五島市ならではのプログラムを構築し、五島市でしか学ぶことのできない体験プログラムを提供することで、未来を創る子どもたちに深い学びを感じていただきたいです。


国内初の浮体式風力発電施設「はえんかぜ」(崎山漁港沖)

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▷五島市体験交流協議会


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