【教育旅行特集インタビュー】文科省初等中等教育局に聞く 


課題発見し解決する力を育成

新学習指導要領改訂で重視

 学習指導要領の改訂により、小中高の教育では「探究」がより重視されている。高等学校では、「総合的な学習の時間」が「総合的な探究の時間」に変更された。こうした流れから特別活動の「修学旅行」でも、今後、探究学習を取り入れた活動が活発化すると見込まれる。高等学校の修学旅行はどう変わるのか。また、探究学習を取り入れた修学旅行プログラムとはどういった形なのか。文部科学省初等中等教育局に聞いた。

 ――高等学校で「総合的な探究の時間」がスタートした。その狙いは。

 文部科学省初等中等教育局教育課程課学校教育官・能見駿一郎氏 新学習指導要領では「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善を求めている。「深い学び」の視点については、「習得」「活用」「探究」という学習の過程の中で、各教科、科目などの特質に応じた見方、考え方を働かせることで、学びの質を高めることを重視している。

 これまでの「総合的な学習の時間」から「総合的な探究の時間」に名称変更をした趣旨は、学習指導要領改訂の方向性を示した中央教育審議会答申の中で「高等学校においては、小・中学校における総合的な学習の時間の取り組みの成果を生かしつつ、より探究的な活動を重視する視点から、位置付けを明確化」することが必要と指摘され、その位置づけを明確化したからだ。学習指導要領の目標規定も見直され、総合的な探究の時間では、「探究の見方、考え方を働かせ、横断的、総合的な学習を行うことを通して、自己の在り方生き方を考えながら、よりよく課題を発見し解決していくための資質、能力を育成する」ことを目指す。

 同局教育課程課教科調査官・長田徹氏 「探究」は、平成10年・11年改訂の学習指導要領で、総合的な学習の時間が位置付けられたことにより全国の学校で取り組まれるようになった学習過程(プロセス)だ。変化の激しい世の中を生きていく上で必要な力、汎用的能力を育むためには、教科書を用いた学習だけではなく、生徒が自ら課題を設定し、必要な情報を収集し、情報を整理、分析して、まとめ、他者に表現していく、問題解決的な活動が求められた。これが「探究」だ。今回の改訂でもその重要性は強く訴えられた。

 ――探究学習のポイントを教えてほしい。

 能見氏 「総合的な探究の時間」のキーワードは二つ。一つは「探究の過程の高度化」だ。「課題の設定」「情報の収集」「分析」「まとめ・表現」という探究の過程を高度化すること。もう一つは「自律的な探究」。目標規定の中にも「自己の在り方生き方を考えながら」とあるが、生徒自身にとって関わりが深い課題を設定する、探究の過程を自分の力で進められるようにするなど自律的なものとすることだ。

 ほかの教科、科目では当該教科の理解を深めるところに探究の重点があるが、総合的な探究の時間は、複数の教科、科目の見方、考え方を総合的、統合的に働かせて探究するところに特質がある。

 ――修学旅行でも今後、探究学習が重視されていくのだろうか。

 長田氏 修学旅行は、学習指導要領の特別活動の種類「旅行・集団宿泊的行事」に位置付けられている。なぜ修学旅行をするのか。それは学習指導要領に明確に示されていて、平素とは異なる生活環境の中で日頃の学校での学びを生かす。また、修学旅行に行くことによって学校での勉強や生活はやはり大事だと生徒たちに実感させることに意義がある。生徒同士が人間関係をより深める場でもある。

 学校教育の中でいわゆる教科書がない模範解答もない探究的な学びが必要となっているのであれば、当然、修学旅行の中でもその探究を意識しなければならない。

 能見氏 総合的な探究の時間では、他の教科や特別活動などで身に付けた資質、能力を関連付けることを規定している。特別活動の方でも、行事の内容に応じて各教科や総合的な探究の時間等との関連を工夫するよう示されているので、相互に関連付けながら学習活動を進めてほしい。

 ――その修学旅行だが、コロナ禍で延期、中止する事態になっている。文部科学省では、学校関係者に対して、「修学旅行は、子供たちにとってかけがえのない貴重な思い出となる有意義な教育活動であるため、その教育的意義や児童生徒の心情等を考慮し、適切な感染防止策を十分講じた上で、その実施について特段の配慮をお願いしたい」と要望している。

 同局児童生徒課課長補佐・進路指導調査官・齋喜徳史氏 コロナ発生直後から、文科省として、各学校設置者に向けて、修学旅行の実施に向けた配慮をお願いをする通知を何度か出してきた。

 修学旅行は、日常の学校生活では得ることができない、いろいろな感動や実体験を子どもたち同士が共有することのできる大変貴重な機会だ。学校外の自然や文化に触れる体験を通じてさまざまな学習活動を充実させること、あるいは、集団生活の中を通じて基本的な生活習慣や公衆道徳の体験を積むことや、寝食を共にして生徒同士や生徒と先生との人間的な触れ合いの中で信頼関係の大切さを知ること、また、思い出を作る場でもある。最終的には生徒や教職員の間において、より良い人間関係を形成することにつながる。

 文科省としては、特にコロナは健康に大きい影響が及び得る、未知の感染症であるので、各学校設置者においては、慎重に状況を見極めつつ、修学旅行の教育的な意義や生徒の心情などを考慮して、適切な感染防止策を取りながら、何とか実施してほしいと、考えている。また、感染状況が厳しく、実施が困難と考えられる場合においてもそれで止めてしまうのではなく、実施を延期したり、行き先を変えたり日程を短縮したり、やり方を変えながら実施してほしい。

 ――探究学習が重視されることにより、高校の修学旅行はどう変わるのか、また、どう変わっていくのが望ましいのか。

 齋喜氏 修学旅行の中でどんな活動をするのかについては各学校においてそれぞれ判断していただくこと。だが、探究学習のことを考えれば、一つには、総合的な探究の時間やいろいろな教科、科目を連携させて、生徒が主体的に取り組めるような活動を取り入れていくことが大切だ。これをやれば探究学習になるというわけではないが、「班別自主行動」を活動に取り入れるのは一つの大きなやり方だ。後は、事前・事後学習などを含めた形で行うことも重要になる。

 ――最後に、文科省として学校関係者に伝えたいメッセージは。

 長田氏 学校生活というのは、ややもすれば単調になりがち。その学校生活の中で修学旅行を体験することによって秩序と変化が生徒たちに生まれる。また、学校生活の中に折り目ができる。言い換えれば、修学旅行を中止することによって生徒たちがその年代で経験しなければいけない、秩序やルール作り、折り目、さらには、学びのつながりや生き生きとした学校生活を実感するチャンスを失うことになるかもしれない。だから、安易な中止ではなく、さまざまな工夫をして修学旅行を実施し、そういったことが経験できるチャンスを生徒たちに与えてほしい。

 齋喜氏 修学旅行は、生徒にとってこの時しかできない体験であり、非常に教育効果が高い教育活動である。コロナの状況下であっても実施に向け、工夫してほしい。

 

 
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