【新春特集】世界から関心が集まる日本の酒造り 日本酒蔵ツーリズム推進協議会 事務局長 杉野正弘氏に聞きく


 銘酒の産地を訪れ、蔵での試飲や酒蔵見学、郷土の食材を使った料理とのペアリングを楽しんでもらう「酒蔵ツーリズム」。海外における日本酒人気の高まりもあり、新たな観光のスタイルとして近年注目を集めている。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に2013年、「和食」が登録されたのに続き、この12月には日本の「伝統的酒造り」が同遺産に登録され、酒蔵ツーリズムの普及にもより一層弾みがつきそうだ。ここでは酒蔵ツーリズムの普及に努める「日本酒蔵ツーリズム推進協議会」(事務局=日本観光振興協会)会員の酒蔵を紹介するとともに、同協議会の杉野正弘事務局長に同ツーリズムの魅力と可能性について語ってもらった。

「酒蔵ツーリズム」の魅力と可能性 日本酒蔵ツーリズム推進協議会 事務局長 杉野 正弘氏

 ――酒蔵ツーリズムについて改めて。

 各都道府県に特徴的な酒蔵がある。それぞれに地域性があり、観光資源としてもすごくいいものだ。ツーリズムとつなげることにより、地域のブランド化や、日本産の酒の消費拡大を図れると、その推進への機運がおよそ10年前から高まり、プラットフォーム的な組織「日本酒蔵ツーリズム推進協議会」が2016年に設立された。日本観光振興協会内に事務局がある。

 ――協議会の参加メンバーは。

 全国およそ50の酒蔵や酒造組合が参加しているほか、政府機関、地方自治体、関係団体・企業、個人なども会員として名を連ねている。

 ――協議会ではどのようなことを。

 「日本酒フェア」などお酒に関わるイベントや、「ツーリズムEXPOジャパン」など観光に関わるイベントでブースを出展し、各地の酒蔵や酒蔵ツーリズムをPRしている。「ITB」(ドイツ・ベルリン)など海外の旅行博にも出展している。

 酒蔵をツアーのコースに組み入れるにはどうすればよいかなど、旅行会社からの問い合わせにも応じている。

 酒造りの見学ができるところ、試飲のみができるところ、食事処を併設しているところなど、酒蔵によりさまざまだ。その情報提供を行っている。

 ――日本の酒類の消費状況は。

 日本人の酒類の消費量は、若者の酒離れなどもあり減少傾向にある。全国の酒蔵の数もこの40年で約3千から約1400へと減少している。

 しかし、海外での日本産の酒の人気は高まっている。輸出金額は財務省の統計によると2022年に1392億円。初めて1千億円を超えた前年から21・4%増と、さらに大きく伸びている。品目別ではウイスキーの560億円と清酒の474億円が多い。輸出先は中国、アメリカ、香港、台湾が上位となっている。

 ――インバウンド客が日本を楽しむ上で、酒は格好の素材といえそうだ。

 和食が2013年、ユネスコの無形文化遺産に登録され、海外でも和食の人気が高まっている。そして日本の伝統的酒造りもこの12月に同遺産に登録された。

 日本酒は伝統的に食中酒で、日本各地の郷土食と合うように造られている。日本酒をおいしく頂くには、郷土の食とともに現地に行って頂くのが一番だ。

 訪日は東京、京都、大阪などのゴールデンルートが中心で、東北などその他の地方はまだ少ない。しかし、これらの地方でも、それぞれ特徴のあるおいしい酒が造られている。多くの人に日本のさまざまな地域に行って、食とともに郷土の酒を楽しんでほしい。

 特別な体験というものが富裕層を中心に興味を持たれている。日本の酒を造る工程を学んだり、見学できたりする酒蔵で特別な体験を多くの人にしてもらいたい。

 ――杉野局長自身は日本酒党?

 もともとウイスキー派だったが、だんだんと日本の酒の魅力に引かれてきて、今ではよく飲んでいる(笑い)。

日本酒蔵ツーリズム推進協議会 事務局長 杉野 正弘氏

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