作業レベルの四つの工程のうち、残る一つの付加価値を生まない工程―「停滞」について考える。
(10)停滞
本コラムの<37>でも申し上げたように、「停滞」は旅館の生産性を考える上ではそれほど重要な部分でないが、中には問題とすべき「停滞」もある。
真っ先に考えられるのは「仕上がった料理の停滞」だが、これはどちらかと言えば品質の問題なのでここでは省く。
取り上げたいのは「情報の停滞」による生産性の阻害である。問題となる主な情報として「予約情報」「当日確認・変更情報」「現場業務の進行情報」の三つが挙げられる。
(ⅰ)予約情報
予約受けや営業活動で得られる情報である。業務の出発点になる情報であり、その質とタイミングが生産性に及ぼす影響は極めて大きい。
まず売り上げに直接関わる情報として「予約の精度」が挙げられる。キャンセルの可能性、宿泊人数や利用室数などの見極めの早期化を図りたい。これらが遅くなればなるほど、最終的に客室を埋めきれず売り上げの機会ロスとなる。業務効率とは違うが、これこそ生産性低下の大きな要因である。だからこれらの確認は「早めに」そして「何度も」行うことだ。
また併せて、確認に基づく「部屋割りの洗い直し↓正確な空室状況の把握」の作業を随時行っておく必要がある。連日のように満室状態のところはこれがよくできているが、そうでない旅館に限って一般にルーズである。
こうしたことが予約担当者任せで組織的に管理されていないとすれば、今すぐにでも改善をお勧めしたい。「組織的に管理」とは、ルールを決めてそれに則って行うようにすることだ。すなわち、予約内容の「確認時期」と「確認事項」、および部屋割りの洗い直しによる空室状況の「発信(報告)サイクル」を決めて実行することである。これだけで売り上げを伸ばすことも十分に見込めると思う。
部屋割りの洗い直しは、なにも全ての日について行う必要はない。休前日など、満室かそれに近い日だけ行っていけば十分である。
次に、団体を中心とする「準備手配事項」の事前確認である。例えば宴会場の席配置など、どのみち決めなくてはならないことなのに、事前に打ち合わせされていないケースも多い。
団体対応については、多くの旅館でA3サイズぐらいの「打ち合わせフォーム(様式)」ないしこれに相当する機能が予約システムにあるが、多く見られる問題は、「そのフォームに忠実な打ち合わせ・確認が行われていない」ことにある。
打ち合わせフォームはふつう、それを埋めていけば必要なことを自動的に漏れなく確認できるようになっているはずだが、往々にして担当者の「悪しき慣れ」がそのへんをルーズにしている。「それは当日来てから」などという確認の後回しが段取りを慌ただしくし、場合によっては「やり直し」など要らぬ負荷を招いている。
やるべきことは単純だ。打ち合わせ時に「打ち合わせフォームを使う」、またその記入欄を「きちんと埋める」を徹底すればよい。ただしそのフォームが10年以上も前に作られたものでは、今の実情に合っていない場合もある。となると、それを使うこと自体ナンセンスなので、この際見直したい。
(株式会社リョケン代表取締役社長)