(11)マニュアルの効用(続き)
前回は「繰り返されること」をマニュアルにしておくメリットについて述べた。これが業務の効率化だけでなく、品質の安定化、未熟練者の即戦力化に大きな効果をもたらすことがご理解いただけたことと思う。
ただ概念的なことを中心に述べたので、具体的なイメージが少々しにくかったかもしれない。そこでマニュアル化の図れそうなことの例をいくつか挙げてみよう。
・お客さまや予約内容に関する変更事項の伝達先と伝達方法
・駐車場誘導やお預かりする車の管理方法
・館内や客室内についての説明事項やその内容
・料理の材料、作り方、盛り付け要領…いわゆるレシピ
・布団の敷き方と敷いた後の状態(座卓・座椅子・座布団などの置き方)
・コーヒーの淹れ方、あるいはコーヒーマシンの取り扱い方
・会議のセッティング状態(席間隔のとり方、機器・備品の用意と状態、空調、照明など)
・子供客の扱い(浴衣・スリッパ・その他備品の用意、留意事項)
・旅行社ごとのクーポン対応留意事項
・団体客の会計手続き、売掛金管理の方法
・ボイラー、冷温水発生器などの操作手順、異常時の対処方法
・納入物品の検収方法(納品書との照合、数・品質・量目チェック)
・倉庫内の物の置き場所、置き方、備品の所定位置
・毎週清掃、毎月清掃、半年ごとに清掃などの項目リスト
いかがだろうか。いずれもマニュアルにしてあるのとないのとでは大きな違いがあることが想像いただけるであろう。
さて、「それではマニュアルを整備しよう」という話になったとする。しかし取りかかる前にちょっと立ち止まって考えていただきたいことがある。それは「どんなレベルのマニュアルを作るのか?」ということだ。
(12)マニュアルのレベル
マニュアルと一口に言ってもいくつかのレベルがある。上から順に並べると…
(ⅰ)理念・精神(目的・意識)
(ⅱ)全体方針(規範・目標・考え方の基準)
(ⅲ)管理方針(指揮系統・マニュアルの用い方や管理指針など)
(ⅳ)業務(体系、フロー、分掌、時間帯など)
(ⅴ)作業(準備、対象、手順、材料、道具、方法、所要時間など)
(ⅵ)動作(ことば、動作、表情、動かし方など)
必ずしもこの通りが正しいとは限らないが、ざっとこんな全体像を頭に描きながら、作ろうとするものがこれらのどこに位置付けられるのかをまずはイメージしておく必要がある。そうでないと作成意図がずれてトンチンカンなものになりかねない。特に気を付けていただきたいのは、「業務レベル」「作業レベル」「動作レベル」を切り分けて考えることだ。
例えば、ご到着のお客さまに対して「誰が、どの時点で、どんなサービスをするか」といったことは業務レベルだが、そのマニュアルに話す言葉や所作などまで一つひとつ書き出したらきりがないし、業務レベルとして知りたい情報を見つけ出すのにとても不便なものになってしまう。
「どんなレベルのマニュアルを作るのか?」。初めにそのイメージをお互い共有しておくことが大事だ。
(株式会社リョケン代表取締役社長)