マニュアルに関する話の最後として、視覚的なマニュアルとするための提案を加えておきたい。すでに連載<50>((15)使いこなすマニュアル)でも「親しみやすく」としてふれたが、もう少し詳しく述べる。
(18)視覚的なマニュアル
何度も言うが、マニュアルは難しくないのがよい。なるべくわかりやすく、直感的に理解できることが望ましい。そのためには視覚的な要素をふんだんに取り入れることだ。用いるべきものは、写真、図・イラスト、現物資料である。
(ⅰ)写真
ひと昔前に比べて、写真は撮るのも使うのも格段に手軽になった。パソコンをちょっと使い慣れた人なら、文書中に容易に貼りつけることができ、言葉で説明するよりはるかに少ない手間で済む。しかも「百聞(百の言葉)は一見(一枚の写真)にしかず」である。
以下のような「使いどころ」がある。
セット状態のお手本――料理の盛付けや並べ方、客室の卓上や洗面周りのセット、ベッドメイク、浴場のカラン周りセット、各種備品の整頓状態など。
あるべき形――お辞儀のかたち、器や飲み物の持ち方、ご飯の盛り加減、生ビールの泡具合など。
設備管理――どれが何という機器なのか、バルブや計器類の位置や見方、設定状態など。
(ⅱ)図・イラスト
宴会場などの席配置、作業分担や組織系統といったものは図に示すのがわかりやすい。また動きを伴って写真で見せるのが困難なものはイラストで示そう。図画の得意な人が社員の中に一人や二人はいることと思う。
カットイラストは、たとえ解説の意味がなくとも、入れるだけで親しみやすくなる。
(ⅲ)現物資料
事務作業の説明には、帳票類の現物コピーを用いるのがよい。
予約受付票、クーポン・売掛管理台帳、飲み物伝票、料理材料手配表、設備管理の記録帳といったものである。一表全部ではかなりの紙面をとるので、項目名や記入例など、説明に必要な部分だけ切り抜いて貼りつける。
ところで、こうした素材を入れると一般に紙面を食う。それによって一つの項目が何ページにもなるのは好ましくないので、なるべく「1項目1枚主義」で収めるよう意識したい。
(19)動画のマニュアル
映像がかなり扱いやすくなった今日、マニュアルも紙に囚われる必要はない。接客など、「動作」に関わるものは動画で見せた方がよほどわかりやすく、頭にもスッとインプットされるので、積極的な活用をお勧めする。
ここで少しだけ宣伝をお許しいただけるなら、弊社では本年、動画による通信研修「eラーニング講座」というものを始めた。接客サービス向上と人材育成のツールとしてお役に立てることと思う。よろしければご利用いただきたい。
動画は、見るためにそれなりの装置環境が整っていなければならない。また見るのに必ず一定の時間を必要とするので、紙のマニュアルのように「これを明日までに憶えてきなさい」というのは、まだ難しいかもしれない。が、これも工夫しだいである。
社内に学習可能な機器を備えたデスクを設けるとか、集合研修の中で見せるなど、やり方はいくらでもある。
(株式会社リョケン代表取締役社長)