独自価値は「競争の中で埋没しない」「選ばれる、指名される理由になる」といったイメージについて前回述べた。その続きとして、独自価値というもののイメージを別の角度から考えるが、ここからは「同じ独自価値を考えるならこういうものを」というポイントをお伝えしたい。
(5)中長期的に戦えるものに
同じ価値でも、ごく短命に終わるものから、長く威力を発揮し続けるものまである。例えば「夕食に○○が付く」といった類いのものは一般に「その時だけの価値」といえる。またお金さえかければまねのできそうな施設や、単に「見どころ」として紹介されるだけの観光スポットなども、長く価値を保つことはできない。
価値にはおのずと有効な期間がある。これを仮に「価値寿命」と呼ぶならば、独自価値として目指したいのは、価値寿命の長いもの、中長期的に戦っていけるものだ。
「VRIO分析」というものがある。これは米国の経営学者ジェイ・B・バーニー氏によって提唱された理論で、自社の保有する経営資源に基づき、どの程度の「競争優位性」を持つかを分析・評価するフレームである。
・V(Value)…経済価値
・R(Rarity)…希少性
・I(Inimitability)…模倣困難性
・O(Organization)…組織性
自社が持つ(他社が持たない)経営資源や、それをコントロールできる度合い、それを活用する組織やシステム化の度合いなどについて分析するものである。理論の正確な意味とは少しずれるかもしれないが、分かりやすく言えばこういうことだ。
1、経済価値があるか?…なければ「競争劣位」にある。
↓
2、希少性があるか?…なければ「競争均衡」、あれば「競争優位」にある。
↓
3、他社による模倣が困難か?…容易に模倣できそうならば「一時的競争優位」、困難であれば「持続的競争優位」にある。
↓
4、その価値を生かして発揮する仕組みなどが組織化されているか?…されていれば「最大限の持続的競争優位」にある。
最後の「組織化」という部分が少し分かりにくいと思うので補足する。例えば顧客の組織化、商品やサービスの提供を可能にする仕組みの確立、運営に携わる人の育成、サプライチェーン・マネジメント(これの解説は別の機会に)、ネットワークシステムの構築などがそれにあたる。
話を元に戻そう。要約すれば、「価値→希少性→模倣困難性→組織化」だ。このうち下にあるものが備わっているほど「強い」ということである。
「独自価値」もこれに当てはめて考えることができる。なるべく下にある条件まで備える。そういうものを作り上げていくことが、より強く長い価値寿命を築くことにつながる。前回ご紹介した「斎藤ホテル」さんの事例は、まさにこの四つの条件を備えた優れたモデルと思われる。
独自価値づくりを考えるなら、希少性ぐらいのところで「これならいける」と終わらせず、それをさらに、よそが容易にまねできないものにするにはどうするか? 組織化するには?…と、その先の、打ち破られないための補強を考えることをお勧めする。
(株式会社リョケン代表取締役社長)