【旅館はもっと良くなるべきだ 旅館経営 タテ・ヨコ・ナナメ 114】新型コロナウィルスへの経営対応 リョケン代表取締役社長 佐野洋一


 ここしばらく、人に関するテーマを考えてきた。今回もその続きを展開していく予定であった…だが、ウイルス感染症に伴う事態は、それどころではなくなってきている。そこで急きょ、この問題への対応についてお伝えしたい。

 感染の状況、感染経路や予防対策といったことについては、連日のマスコミ報道や関係機関の見解に委ねるとして、旅館・ホテルなどの事業主が経営維持のため、緊急に検討すべき支援策の利用に焦点を当てる。

 本紙2月22日号の記事でも紹介されたが、政府で「新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策」が決定された。これに基づき、影響を受ける事業者への支援策が、経産省のホームページで示されている。その内容は―1.資金繰り支援、2.設備投資・販路開拓支援、3.経営環境の整備―の3本の柱からなる。このうち、旅館が直面する感染症影響問題に関係するのは、1の資金繰り支援、および3の(2)雇用調整助成金の特例措置であろう。これらの要点をご紹介する。

 1.資金繰り支援

 (1)セーフティネット保証4号

 最近1カ月の売上高が前年比20%以上減少し、その後2カ月も同様が見込まれる場合、信用保証協会により、一般枠とは別枠で最大2億8千万円まで、100%保証が受けられる。4号は自然災害などによる影響地域を指定するものだが、このたびの感染症の影響は全国に及んでいることから、47都道府県すべてが対象地域に指定された。

 (2)セーフティネット貸付

 売り上げの減少など業況が悪化しているが、中期的に回復・発展が見込まれる中小企業者に対し、中小事業(旧中小公庫扱い)7億2千万円、国民事業(旧国民公庫扱い)4800万円を限度に、運転資金、設備資金が低利で貸し付けられる。従来の「売上高5%以上の減少」といった数値要件が取り払われ、「今後の影響が見込まれる事業者」も対象となる。

 (3)衛生環境激変対策特別貸付

 感染症の影響により、前年または前々年同期比で10%以上売上高が減少して、資金繰りに支障をきたしている旅館業、飲食店、喫茶店に対し、別枠で旅館業は3千万円、それ以外は1千万円の運転資金が低利で貸し付けられる。

 (4)金融機関等への配慮要請

 事業者からの返済緩和要望等に対する「柔軟な対応」を金融庁から要請した。

 3.経営環境の整備

 (2)雇用調整助成金の特例措置

 売上高などが10%以上減となった事業主が、休業、教育訓練、出向で雇用を維持した場合、中小企業なら休業手当や賃金などの3分の2(大企業は2分の1)が助成される。1年間で最長100日まで。特例措置として…休業などの計画は3月31日までの「事後提出」でも可。生産指標の確認対象期間を3カ月から1カ月に短縮。最近3カ月の雇用指標が前年比で増加している場合も対象となるなど。適用要件で日中間の影響という枠が外され拡大された。

 支援については、政府系金融機関や商工会など、千余りの拠点が「経営相談窓口」となっているので、まずは早めに相談し、利用すべき支援策は利用して、なんとかこの危機を乗り切っていただきたい!

(株式会社リョケン代表取締役社長)

 
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