前回は、「営業/休業の判断」に当たり、営業するだけでどうしても高まってしまう(その日の)固定費、中でも大半を占める水道光熱費を抑制するためのいくつかの方法をお伝えした。今回はもう一つの要素、変動費率について考えたい。
②「少ない客数で営業する場合の変動費率」を下げる
人件費は大半の旅館で固定費部分と変動費部分からなるが、ご承知のように、今は「(人を)休業」させれば雇調金によって給与のほとんどが補償されるので、固定費ラインは実質的にぐんと下がっている。その代わり、出勤させた途端にドカンと費用負担としてのしかかってくる。つまり変動費率が大幅に高くなっているのだ。それでも、これが売り上げにほぼ比例して増えるだけならまだいいが、現実にはなかなかそうならない。お客さまが少ない時でも、それなりの人数を出勤させることになるからだ。これをなるべく抑えるには…。
(1)接客係等の出勤シフトを細かくする
出勤人数を従来よりも厳格に管理する。判断材料とするのはお客さまの数だ。完全に客数比例というわけにもいかないが、「15人以下の場合は…、20人までなら…」という具合に出勤人数の基準をあらかじめ定めておき、これに照らして人数を決定するようにしていこう。
(2)布団敷き・上げの時間を変える
近年、布団上げをお客さまの出発後とするところは多くなってきたが、これを一歩進めて、布団敷きを入室前に済ませておくことも検討してよい。これによって作業時間帯が日中に移り、夕食前後のピーク人員を間違いなく減らすことができる。また専任の布団敷き係でなくとも、すなわち兼務での対応も可能になる。
(3)料理をまとめて作っておく
(4)料理の仕上げ工程を見直す
この二つはいずれも、お客さまの少ない日でも調理場を少ない人数で回せるようにするための工夫だ。事前に数日分まとめて、しかもなるべく最終状態に近いところまで仕上げておき、当日の仕上げに調理人が関わるべき工程を少なくしておく。場合によっては献立そのものの見直しも検討されてよい。
(5)フロント・設備管理等の業務を見直す
これら共益的役割を担う部門の業務がかなり問題である。抑えるには、まず客数が少ない場合にもやるべきことを必要最小限に絞っておく。その上で、部門を跨いだ兼務もできるよう、互いに業務のやり方を教え合うことをしておこう。
今は「こういう時だから」という認識がお客さまにも共有されている。これを背景に、ある程度特殊な運営となることは容認してもらえるだろう。また「そういうプラン」として打ち出すことも考えられる。
ところで、このような運営はコロナ以外の時でも応用が可能である。名付けて「少客シフト」(=お客さまの少ない日が一定期間続く見通しにおける運営シフト)。
このようなものを定型化して、そういう局面の場合にはすぐに切り替えられるようにしておく。車が急な坂道を登る時、セカンドやローギアにシフトチェンジするのと同じである。こうしておけば、不況抵抗力も高まるはずだ。
(リョケン代表取締役社長)