【旅館はもっと良くなるべきだ 旅館経営 タテ・ヨコ・ナナメ 140】新型コロナウイルスへの経営対応27 感染懸念下のスキ間作戦2 リョケン代表取締役社長 佐野洋一


 前回に引き続き、感染懸念下における集客のヒントとなる作戦をお伝えしていきたい。

 (3)部屋出し

 食事の「部屋出し」はどうやら安心感があるらしく、部屋出しをうたい文句にしているところは、お客さまの入りも相対的に良いようである。やれる可能性のあるところはこの時期検討してよいだろう。ただし以前にも述べたが、部屋出しを行うにはそれなりの構えが必要なので、安易に考えない方がよい。

 (4)お一人さま

 「お一人さま」市場は年々拡大している。近年目立って増えているのが男性の一人旅。特に定年を迎えて余裕時間があり、まだ元気に動ける「アクティブシニア層」の活動が顕著だ。昔は1人で旅行するということには、なんとなく薄暗いイメージが伴っていたし、旅館でも1人客を受け入れることに抵抗があったが、今は立派な市場となっている。

 問題は料金設定だろう。シングルルームは別として、一般の客室で通常の1名並み料金というわけにはいかないかもしれないが、今この時期、入り込みの見通しを考慮に入れながら、「いくらなら受け入れるべきか」を柔軟に検討してみてはいかがだろうか。

 (5)マイカープラン

 マイカー移動は、感染懸念に対する心理的免罪符となっている。マイカーで旅行するのはごく当たり前のことだが、あえてそれを「プラン」とすることで、もともとマイカーでの旅行を考えていた人に、「ちょうどいい、これにしよう」と引き寄せることをねらいとする。

 感染防止対策のアピールには、単に不安を払拭(ふっしょく)するだけでなく、旅行することの「後ろめたさ」を取り除く効果があることを意識しておきたい。つまり同じやるなら、「言い訳」になるような対策内容をアピールすることに、より意味がある。「こうなっているから」「こうしているから」↓「安心できます」という因果関係を具体的に示すとよい。

 お荷物は、手袋を着けた係が台車でお部屋までお運びします、なんていうサービスをアピールするのもよいかもしれない。またお帰りの際に、消毒効果のあるウェットティッシュと、「疫病退散・あまびえ」の車用お守りをプレゼントするというのはいかがだろうか。

 (6)野外アクティビティ

 ゴルフ場やキャンプ場は比較的底堅い業績を上げている。キャンプ場の中には、これまでほとんど利用のなかった冬場にさえ、コンスタントな利用が生まれているところもあるようだ。また最近ではグランピング(グラマラス・キャンピング)がにわかに脚光を浴びて、設備を整えたところでは人気を博しているという。

 「野外」のイメージは「3密」の対極にある。このことが安心感と直結して、たまったレジャーニーズのはけ口となるのだろう。

 野外アクティビティは、必ずしも設備が整っていなくてもできるものがある。ウォーキング(散歩・散策)、ジョギング、オリエンテーリング、ピクニック、屋外で食事、たき火、花火、釣りといったものが考えられる。しかしただ「こういうことができます」というだけでは誘客に結びつかない。これに旅館としてどんな価値を付加できるか、「…のためにこういうご用意をいたします」ということをもう一度考えてみよう。

(リョケン代表取締役社長)

 
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