求人の方法について引き続き見ていく。
(10)ダイレクトリクルーティング
直訳すれば、「直接の採用活動」である。求人広告や人材紹介など、これまで挙げてきた手法が、「向こうからの応募を待つ」スタイルであるのに対し、「企業側から求職者に直接アプローチしていく」ようなやり方を総称してこのように言い、近年かなり盛んに行われるようになってきた。今回はこのうち、人材仲介サービスとして典型的に行われている「オファー」と「スカウト」について取り上げたい。
前述の通り、どちらも求人広告や人材紹介と違って、人材情報を見た上でこちらから要件にかなった人材だけにアプローチできることがポイントである。そのため、特別な資格や技能を備えた人材、高度な能力を有する人材を確保したいといった場合に、特に適していると言える。
(ⅰ)オファー
プラットフォームを提供している事業者にあらかじめ登録された人材情報の中から、自社の採用基準にかなう人材を選び、企業側からメールでオファー(申し出)をする。オファーは、一般に多数の登録者に対して発することになる。その内容に関心を持った求職者が応じてくれば、面談などのステップに進む。そして最終的に双方が入社合意に達したら、事業者に成果報酬を支払うというかたちが基本である。
(ⅱ)スカウト
やはり登録されたリストから選び出した人材に対し、直接もしくはプラットフォーム事業者のエージェント(代理人)を通じてスカウト(勧誘)する。オファーが多数の相手に「この指とまれ」式に呼びかけるスタイルであるのに対し、特定の相手に、より積極的な選考意思を伝えるものである。
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実は、この「オファー」と「スカウト」という区分はあまり明確ではない。仲介事業者によって、別のものとして使い分けているところもあるが、例えば「ビズリーチ」や「マイナビ転職」では、「スカウト」がここで言う「オファー」の意味で使われている。またこれも一概には言えないが、どちらかといえば「スカウト」は中途転職者に、「オファー」は新卒・中途どちらにも使われるようである。
なお一般用語として「オファー」には「条件提示」の意味も含まれており、選考の過程で「あなたに対して提示する条件」という使い方をされる場合もあるので、誤解のないよう利用する事業者ごとによく確認していただきたい。
これらのシステムにおける採用費用は、数名程度の場合、1人につき30~40万円ぐらいが相場のようだ。中途採用(転職)においては、想定年収の15%程度で設定されているケースが多い。また、採用予定人数によって割安となるものもある。他方で、成果報酬とは別に、初期費用や年間基本料を課すシステムになっている事業者やプランもある。
1人当たり採用費用は概して人材紹介よりも低く、採用人数が多いほど、その開きは大きくなるのが一般的だが、メールに対する反応期待や、それに対応する担当者の手間のことなども考慮する必要がある。採用予定数が1~3人程度と少ない場合などは、必ずしも有利とは言えない。利用を考える場合は、そのあたりも見通した上で判断されたい。
(リョケン代表取締役社長)
※観光経済新聞11月18日号連載コラム