【旅館はもっと良くなるべきだ 旅館経営 タテ・ヨコ・ナナメ 216】採用対策⑦ 佐野洋一


(13)自社HPの活用(続き)

 前回は、自社の採用ページを設けるべきこと、また営業用のHPからそこへの導線を付けておくべきことを述べた。というわけで、採用ページを作るとして、そこにどんなことを掲出していくかを考えていきたい。

 一般的には、職種とその仕事内容、給与などの待遇、勤務形態といったことが書かれている。これらは基本的な要項として一通り掲げておくべきことであろう。だが想像してみればおわかりと思うが、これだけで「この会社に入ろう」と思う人はいない。もっと積極的に「人を引き寄せる」ことを目的に見直したい。

 「どんな旅館か」ということについては、営業用のHPでほぼ伝えることができているだろう。ただしここで頭に入れておきたいのは、「ターゲットの違い」である。営業用HPのターゲットは顧客であり、採用ページのターゲットは求職者だ。お客さまは、1泊2日か、せいぜい数日の滞在を「買う」だけだが、求職者は長期間にわたり人生を預ける場を求めている。検討・決断することの「重さ」が、お客さまとは比べ物にならない。「求職者の引き寄せ」を意図するなら、そのような観点で採用ページを考えていく必要がある。

 では採用ページでは、いったいどんなことを訴求していくべきか? 目標は大きく二つ―「好きになってもらう」ことと、「就職先としての安心感を与える」ことだと考える。

 (ⅰ)好きになってもらう

 これは顧客における課題とも共通するが、求職者に向けた内容の在り方は少し異なる。

 理念やポリシー―営業向けHPでも伝えている場合があると思うが、採用ページでは、より深掘りして、業務や行動指針にひもづけた内容を伝えていきたい。またそれらを実現するために行っている社内活動―日課、勉強会、企画、研究開発、トレーニングといったもの―を紹介していくのもよい。「この会社は、こういう考え方にもとづき、こういうことをしている」という基盤がしっかりあることを印象付けることである。

 社風、人―活気がある、楽しい、和気あいあいとしている、面白いといった「社内ムード」を伝えていこう。
 業務に絡む研修や発表会、視察活動などのほか、福利厚生の一環として行っている親睦会、運動会、社員旅行、サークル活動といったものを、写真や動画で生き生きと伝えるとよい。また、社員一人一人の素顔を、笑えるエピソードを交えて紹介する、「スター社員」と言うべき人物の、そこに至るまでの道のりをストーリー仕立てで取り上げる、などが考えられる。

 周辺環境―環境を好きになってもらうことは非常に重要だ。しかも、お客さまには「訪れる魅力」があればよいが、そこで働いて生活する人には「住環境としての魅力」も大事な要素となる。だから場所にもよるが、観光スポット以外にも、近くにある公園や憩いの場所、おしゃれなお店、名物店、スポーツ施設、ショッピングエリアなど、周辺の魅力的なコンテンツをできるだけかき集めて紹介してみよう。またそれらに関わりのある人や近隣の人を取り上げるのもよい。親しみや暮らしやすさを感じてもらう上で効果的だろうと思う。

 (リョケン代表取締役社長)    


(2025年2月17日号連載コラム)

 
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