旅館ホテルといって、真っ先に浮かぶ言葉が“女将”ではないでしょうか。旅館ホテルで表の顔といえば女将です。女将は女性しかなれない旅館ホテルの代表として、今に受け継がれています。
女将と聞くと、多くの方が接客を思い浮かべるでしょう。着物を着て表に出る印象が強く、女将の存在には大きなものがあります。 女将は旅館ホテルの代表ですから、経営という大きな責任も担っています。そのために、いろいろな業務をこなします。他業種では複数の部署に分かれているような業務を一手に引き受けることが多いのも、女将なのです。
具体的に女将の仕事を見ていきましょう。
●ストレスのない職場づくり
旅館ホテルは働いてくれるスタッフが機能して、初めて成り立つビジネスです。それだけにスタッフには気持ちよく働いてもらいたいというのが、経営者側の願いです。スタッフにストレスを感じさせない職場づくりをするのが女将の一番大きな仕事といっても過言ではありません。
2019年4月に「働き方改革関連法案」の一部が施行されました。これまでわが国では、長時間労働が多く、有給休暇も消化できない環境が多くありました。パワハラやセクハラがある職場も存在し、正規雇用と非正規雇用の間には格差が存在したのも事実です。これらが職場内の人間関係にストレスをもたらしていたのです。
これからの旅館ホテルは、この働き方改革に基づき、スタッフの誰もがストレスのない働きがいのある職場をつくることが、女将の仕事の最重要課題です。「スタッフを守る」ことで初めてお客さまに対する「おもてなし」も可能となるのです。
●学び、伝える
スタッフは日本人に限りません。最近は、外国人をスタッフに雇うところも出てきています。日本の慣習や文化に慣れない外国人のスタッフに仕事の内容を理解してもらうには、女将自身が彼ら彼女らをまず理解し、その上でどう伝えたらいいかを考える必要があります。
先輩の仕事ぶりを見て学べという時代は終わりました。まず女将は、多様なバックグラウンドを持つスタッフへの教え方を学び、彼ら彼女らが「できる」ようになるまで教えていく、今はその時代です。改善すべきところは改善し、経営に生かしていくことが女将の仕事です。
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■日本ホテルレストラン経営研究所=ホスピタリティ業界(旅館、ホテル、レストラン、ブライダル、観光、介護)の人材育成と国際交流へ貢献することを目的とするNPO法人。同研究所の大谷晃理事長、鈴木はるみ上席研究員が監修する書籍「『旅館ホテル』のおもてなし」が星雲社から発売中。問い合わせは同社TEL03(3868)3275。