【旅館ホテルのおもてなし 45】お辞儀の基本 大谷 晃


 旅館ホテルでは仲居は日に何度もお辞儀をする場面があります。そのときの所作が美しいと、それだけでお客さまは心地良いものです。挨拶の基本動作であるお辞儀を、ここできちんと覚えましょう。

 ●立礼の場合

 立った姿勢でのお辞儀を立礼といいます。頭を下げるときの角度によって種類があります。

 ・会釈―上体を傾ける。角度は15度。一般的なお辞儀。

 ・敬礼―上体を傾ける。角度は30度。お客さまの送迎時のお辞儀。

 ・最敬礼―上体を傾け、角度は45度。特別な敬意を表すお辞儀。

 お辞儀をするときの基本は「気をつけ」ですが、傾けた体を元の「気をつけ」の位置まで戻して、初めてお辞儀は完了します。上体を傾けてから起こすまでは一呼吸おくこと。傾けている間、上目遣いで相手を見たり、あごを上げたりしないこと。最初に相手の目を見て、最後に再び相手の目を見ると、丁寧な印象になります。

 ●座礼の場合

 和室などで、正座した状態でのお辞儀を座礼といいます。正座をして、背筋を伸ばしたまま体を傾けます。両手は自然に膝の脇を通って膝前の畳に。指先をきちんとそろえるときれいです。

 ・軽いお辞儀―指先が軽く畳につく程度にし、背筋を伸ばして、軽く体を傾けます。茶道では草(そう)の礼、小笠原流の礼法では指建礼(しけんれい)と呼びます。

 ・一般的な座礼―手指の第二関節ぐらいまでを畳につけ、草の礼よりもやや深く体を傾けます。一呼吸おいて、元に戻ります。茶道では行(ぎょう)の礼、小笠原流では拓手礼(たくしゅれい)と呼びます。

 ・深いお辞儀―立礼でいう最敬礼にあたります。手のひらを全部、畳につけます。深いお辞儀をしたら、三つ数えてゆっくりと体を起こします。茶道では真(しん)の礼、小笠原流では双手礼(そうしゅれい)と呼びます。

 ●襖(ふすま)の開け・閉め

 旅館ホテルでは仲居による襖の開け・閉めは多くの場面であります。正しく行うと、見た目にも美しいものです。入室・退室、いずれの場合も、座って行うのが正式です。

 三手(みて)(3段階)で開ける

 ・襖の前、敷居から手のひら一つ分下がった位置に座り、引き手に近いほうの手を引き手にかけ、5センチほど開けます。

 ・その手を、床から15センチほどの高さの枠に当て、体の正面まで引きます。

 ・反対の手で、体が十分通るまで静かに開けます。

 ・入室する前に、必ず一礼します。

 三手で閉じる

 開けるときとは逆の手順をたどります。

 ・襖に近いほうの手で、襖の枠を床から15センチのところを逆手で持ち、体の正面あたりまで引きます。

 ・反対の手に換えて、柱から5センチほどのところまで引きます。

 ・その手を引き手へ移し、最後まで閉めます。このとき、大きな音をたてないように静かに行いましょう。

 ・退出時に襖を閉めるときは、室内に向かって正座をし、一礼します。

   *    *

 ■日本ホテルレストラン経営研究所=ホスピタリティ業界(旅館、ホテル、レストラン、ブライダル、観光、介護)の人材育成と国際交流へ貢献することを目的とするNPO法人。同研究所の大谷晃理事長、鈴木はるみ上席研究員が監修する書籍「『旅館ホテル』のおもてなし」が星雲社から発売中。問い合わせは同社TEL03(3868)3275。

 
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