【旅館ホテルのおもてなし 69】だし 大谷 晃


 日本料理が世界中のどの料理とも違うのは、「だし」にあります。このだしこそ世界に類を見ないものであり、日本料理の最大の特徴と言っていいでしょう。

 近年、このだしを西洋料理にも取り入れようと、ヨーロッパの有名レストランのシェフが来日して「かつお節」を購入し、自国の店で使ったりするなど、だしに対する関心が海外でも広まっています。だしの基本を知っておきましょう。

 日本料理のだしは大きく分けて二つあります。かつお節と昆布などによる動物性素材と植物性素材を合わせたものと、昆布だけ、あるいは昆布と干しシイタケなど、植物性素材を使ったものです。

 使い分けは、どのような料理を作るかによります。

  ●かつお節のだし

 かつお節のだしには「一番だし」と「二番だし」があります。一番だしは、かつお節と昆布からとる最初のだしのことで、雑味が少なく香りが新鮮なため、だしそのものを味わうお吸い物などに使われます。二番だしは、一番だしをとったあとに水を足し、加熱してしっかりとうまみを抽出するものです。料理によっては、かつお節の風味を加えるために、最後にかつお節を入れる「追いがつお」をします。かつお節にはイノシン酸が豊富に含まれ、昆布のグルタミン酸と合わさることで、よりうまみが増します。

  ●昆布だし

 これには昆布を水につけてとる方法と、加熱してとる方法があります。加熱したほうが手早く風味のあるだしがとれますが、長時間水につけて抽出すると、より繊細で上品な、ほんのりと甘みのある透き通っただしになります。

  ●煮干しだし

 かつお節などに比べてややクセの強い魚によるだしです。最も一般的なイワシの他に、飛び魚を使った「あご煮干し」や、アジ、サバ、サンマ、タイなどを使った各煮干しだしがあります。用途に応じて昆布と組み合わせたりします。各煮干しにはイノシン酸が豊富なので、それがだしのうまみをつくります。

  ●精進だし

 その名にあるように、精進料理では魚や肉を禁じていますから、かつお節や煮干しのだしは使いません。その代わりとして、干しシイタケ、大豆、かんぴょうなどの乾物を使ってだしをとります。干しシイタケにはグアニル酸が含まれ、昆布のグルタミン酸と結びつくことでうまみが増し、おいしいだしがとれます。

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■日本ホテルレストラン経営研究所=ホスピタリティ業界(旅館、ホテル、レストラン、ブライダル、観光、介護)の人材育成と国際交流へ貢献することを目的とするNPO法人。同研究所の大谷晃理事長、鈴木はるみ上席研究員が監修する書籍「『旅館ホテル』のおもてなし」が星雲社から発売中。問い合わせは同社TEL03(3868)3275。

 
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