日本人になじみ深い箸ですが、箸にもいろいろな種類があります。場面によって使い分けるのが原則です。また、その扱い方にもマナーがあります。外国人に正しく使っていただくためにも、仲居が箸の正しい知識とマナーを知っておきましょう。
●用途で異なる箸
日常生活にもフォーマルとカジュアルがあるように、箸にも神事や祝い事、正月のような「ハレ」で使う箸と、日常、つまり「ケ」で使う箸とがあります。
ハレの箸
両端が細くなっている両口箸です。素材は柳の白木。柳は神様が宿る木として縁起が良く、またしなやかで折れにくく春一番に芽吹くことからめでたい木ともされます。中ほどが太くなっていることから太箸、俵箸、はらみ箸とも呼ばれます。
ケの箸
両端が細くなっているハレの箸と異なり、片方だけが細くなっていることから、片口箸と呼ばれます。角形と丸形があり、塗り箸(漆塗り)、黒檀、南天、竹などいろいろな種類があります。
割箸
料理店や弁当などでよく使われる箸です。割って初めて使える状態になるため、常に新品であるのが特徴です。ハレにもケにも使えます。
●箸の種類
箸には大きく分けて、取り箸と手元箸があります。取り箸とは、大皿などから料理を手元に取り分けるために使われる箸のことで、手元箸とは料理を口に運ぶ箸を指します。家庭では取り箸の代わりに手元箸を使っても許されるでしょうが、料理店などでは使い分けるのがマナーです。取り箸を口につけるのもマナー違反です。
日本料理を出す旅館ホテルで使用される割箸には次のようなものがあります。
天削箸
てんそげばし、あるいはてんさくばしと呼ばれます。割箸の中では最高級品とされます。箸先と反対側の天の部分が上に向かって斜めにカットされています。高級旅館ホテルや料亭で使われています。
柳箸
正月の祝い膳用の柳の木で作った太箸のことで、折れにくく縁起が良いとされます。
利休(りきゅう)箸
利久箸とも書きます。形は柳箸と同じですが素材が異なり、杉や檜(ひのき)の白肌、松が使われます。茶会席では、赤杉の利休箸をあらかじめ水に浸しておき、使う直前にふきんで水気をとって食べ物が箸につきにくいようにして供します。
元禄箸
よく使われる割箸の最も一般的な形です。角形箸の四角い断面の角を削って滑らかにした物です。
竹の割箸
繊維に沿って割りやすく、油や調味料が染み込みにくいという特徴があります。竹の割箸にも天削箸がありますが、一般の旅館ホテルでは竹双生といって、天の部分が四角く削られ、箸本体は楕円になっている物が多く見受けられます。
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■日本ホテルレストラン経営研究所=ホスピタリティ業界(旅館、ホテル、レストラン、ブライダル、観光、介護)の人材育成と国際交流へ貢献することを目的とするNPO法人。同研究所の大谷晃理事長、鈴木はるみ上席研究員が監修する書籍「『旅館ホテル』のおもてなし」が星雲社から発売中。問い合わせは同社TEL03(3868)3275。