【旅館ホテルのおもてなし 80】アレルギー2 大谷 晃


 ●食物アレルギーを引き起こしやすい食品

 では、どのような食べ物がアレルギーを引き起こしやすいのか、見てみましょう。

 ダントツで多いのが鶏卵です。全体の4割近くにものぼります。牛乳と小麦がそれに続き、このトップ3で、食物アレルギーの7割を占めます。食物アレルギーというと、そばやピーナッツが多いように思われがちですが、実はそうではありません。ただし、この二つで起きた場合は鶏卵より重い症状になるケースが多いとされます。この三つの食品以外では、ピーナッツ、果物類、魚卵、甲殻類、ナッツ類、そば、魚類などがあります。

 重い症状を引き起こしやすく、また、症例数が多い食物は「特定原材料」と定められ、表示が義務付けられています。卵、乳、小麦、そば、ピーナッツ(落花生)、エビ、カニの7品目です。さらに、次の21品目がそれに準じる物として指定されています。アワビ、イカ、イクラ、オレンジ、キウイフルーツ、牛肉、クルミ、鮭(さけ)、サバ、大豆、鶏肉、豚肉、マツタケ、桃、山芋、リンゴ、ゼラチン、バナナ、ゴマ、カシューナッツ、アーモンド。

 旅館ホテルで出す日本料理には、これらの食品は当たり前のように使われます。それだけにお客さまの中にこれらの食品にアレルギーを起こす人がいることを常に頭に入れておかなければいけません。アレルギーをお持ちのお客さまは、ごく少量であっても命の危険にさらされることがあります。中には、アレルギー食材を調理したまな板や包丁を十分に洗わず、そのまま別の食材を切ったりしただけで、アレルギー成分がその食材に移り、アレルギーが誘発されることもあるくらいです。

 ●アレルギーの症状

 次に、アレルギーの症状を知っておきましょう。

 全年齢を通じ、食物アレルギーが最も多く現れるのは皮膚です。約8割を占めます。次が呼吸器と粘膜でそれぞれ2割台。消化器が1割台です。部位ごとに症状を挙げてみました。

 皮膚:かゆみ、じんましん、はれ、紅斑(こうはん)、灼熱(しゃくねつ)感、湿疹

 呼吸器:喉の違和感、かゆみ、声がれ、飲みこみが困難、咳(せき)、呼吸に雑音がする

 粘膜:目(充血、はれ、かゆみ、流涙、まぶたのむくみ)、鼻(鼻汁、鼻づまり、くしゃみ)、喉(口の中・唇・舌の違和感、はれ)

 消化器:吐き気、嘔吐(おうと)、腹痛、下痢、血便

 神経:ぐったりする、意識障害、失禁

 これらの症状からすぐに食物アレルギーと判断するのはむずかしいかもしれませんが、疑いが濃厚と思われる場合は、早急な対処が必要です。上司への報告はもちろんのこと、救急車の手配などが必要です。迅速に動くことがなにより重要です。

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 ■日本ホテルレストラン経営研究所=ホスピタリティ業界(旅館、ホテル、レストラン、ブライダル、観光、介護)の人材育成と国際交流へ貢献することを目的とするNPO法人。同研究所の大谷晃理事長、鈴木はるみ上席研究員が監修する書籍「『旅館ホテル』のおもてなし」が星雲社から発売中。問い合わせは同社TEL03(3868)3275。


(観光経済新聞1月13日号掲載コラム)

 
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