【旅館ホテルのおもてなし 82】宗教と食べ物② 大谷 晃


 ●イスラム教

 キリスト教に次ぐ世界第2位の宗教がイスラム教です。18億人いるとされ、インドネシア、パキスタン、バングラデシュ、インドなど、多くがアジアに住んでいます。

 イスラム教徒のことをムスリムと言います。女性はヒジャブというスカーフを巻いているので、すぐにわかります。最近は日本でもよく見かけます。

 ムスリムが口にできる食物は厳格に決められています。食べて良い物は「ハラール」と言い、食べていけない物は「ハラーム」と呼ばれます。食品に対する戒律は厳しく、ハラームが料理に入っている場合、それを皿のはじによけて食べることさえ許されません。

 タブーとされる「ハラーム」の代表は豚です。豚肉を使ったハム、ベーコン、ソーセージも同様です。牛・鶏・羊は食べられます。ただし、イスラム法にのっとった屠殺による物であることが条件です。魚や貝などの魚介類は基本的に大丈夫です。酒類は「ハラーム」で、厳禁です。アルコールが添加されたみそやしょうゆなども料理には使えません。

 野菜・果物・穀物は「ハラール」。牛乳、ヨーグルト、バターなどの乳製品や卵も「ハラール」で、口にできます。

 ただし、ウナギ、イカ、タコ、貝類、漬け物などの発酵食品は「ハラーム」でなくても、ムスリムにはこれらを嫌悪する人が多くいます。料理には避けたほうが無難です。

 日本人にとって、「ハラール」であるかどうかを見極めるのはむずかしいですが、目安となるのが「ハラールマーク」です。これは、認証機関が製造・調理している会社や原材料、製造工程をチェックし、戒律に違反していないと認定した食品にのみ与えられる物です。この認定マークが付いていれば、安心して料理に使え、お客さまにも提供できます。ただし、このマークが付いていなければ絶対ダメ、というほど厳格ではありません。

 なお、イスラム教では、イスラム暦の9月に当たるラマダンの間は日の出から日没まで断食をすることが義務付けられています。

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 ■日本ホテルレストラン経営研究所=ホスピタリティ業界(旅館、ホテル、レストラン、ブライダル、観光、介護)の人材育成と国際交流へ貢献することを目的とするNPO法人。同研究所の大谷晃理事長、鈴木はるみ上席研究員が監修する書籍「『旅館ホテル』のおもてなし」が星雲社から発売中。問い合わせは同社TEL03(3868)3275。


(2025年2月17日号連載コラム)

 
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