【旅館ホテルのおもてなし 83】宗教と食べ物③ 大谷 晃


 ●仏教

 世界三大宗教の一つである仏教は信徒が5億人、最も多い国が中国です。

 食物に関しては、宗派や国などによって意識が異なります。もともとは生き物を殺生するのを禁じたことで、肉類を使わない精進料理が生まれました。ですが今は、肉類を食べる人も増えています。ただし、僧侶や厳格な信徒は食事を修行の一つと考えるため、禁止事項を忠実に守っています。避ける食材としては、肉全般の他、ニンニク、ニラ、ラッキョウ、玉ネギ、アサツキなどの匂いの強い野菜です。修行の妨げになるなどの理由によります。

 肉に関しては、肉そのものだけではなく、ブイヨン、ゼラチン、肉エキス(肉の煮出し汁、あるいは肉を酵素で分解した液汁を濃縮したもの)、バター(牛乳の脂肪)、ラード(豚の脂肪)なども含まれます。植物性の物で代用したほうがいいでしょう。

 ●ユダヤ教

 世界には1400万人のユダヤ教徒がいて、世界中に散らばっています。

 旧約聖書に基づくユダヤ教の食事規定には、食べて良い物といけない物とが厳格に定められています。この規定をカシュルートと言い、それにのっとった物をカシェル(またはコーシェル)と言って、指定されています。

 動物の中で食べて良い物は、ひづめが完全に二つに割れていて、反すうする動物です。牛、鹿、羊などが該当します。豚、猪、ウサギなどは食べられません。豚がダメなのは、不浄である上、ひづめは割れていても反すうしないからです。また、肉類と乳製品を一緒に食べることも許されません。

 魚で食べても良いのは、ヒレとウロコのある物です。その稚魚や卵も大丈夫です。サケやマグロなどは良くても、カニやナマズなどはダメだということです。サケの卵であるイクラは良いが、チョウザメの卵であるキャビアはダメなのです。また、魚類以外の水生動物では、エビ、タコ、イカ、カキ、貝類なども食べてはいけない物と規定されています。

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 ■日本ホテルレストラン経営研究所=ホスピタリティ業界(旅館、ホテル、レストラン、ブライダル、観光、介護)の人材育成と国際交流へ貢献することを目的とするNPO法人。同研究所の大谷晃理事長、鈴木はるみ上席研究員が監修する書籍「『旅館ホテル』のおもてなし」が星雲社から発売中。問い合わせは同社TEL03(3868)3275。


(観光経済新聞2025年3月3日号掲載コラム)

 
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