
日本は地震大国です。日本国中の地殻で活断層が縦横無尽に走っているため、どこで地震が起きても不思議ではありません。特にお客さまが滞在される旅館ホテルでは、いざという場合に備え、そのための対策を講じておくことが重要です。
●地震の発生時
地震が起きると、恐怖に誰もが身がすくんでしまい、パニックに陥りがちです。そのような場合でも、スタッフはお客さまの身を守る使命を担っています。地震の最初の揺れは1分程度で収まることが多いので、まず自分がパニックにならないように、気をしっかり持つことが大切です。
館内にいた場合は、机やテーブルの下、柱の周囲などに身を伏せます。近くにいるお客さまに「テーブルの下に伏せてください」「頭をかかえてください」と指示をしてから自身の安全を保ってください。
揺れが小さいうちに、近くにある火の元を消します。
揺れが止まったら、周囲をよく見回し、倒壊しそうな箇所があれば、近くにいるお客さまを誘導してその場を離れます。強い揺れで物が倒れたり、窓ガラスが割れたり落下したりすることがあります。その恐れのない場所にすぐに移動します。
エレベーターが作動していても、使用しません。途中で止まると中に閉じ込められるからです。
●館内放送
お客さまはどなたも不安におののいていらっしゃいます。パニックになる方も出てきます。責任者の指示に従い、お客さまへのお声がけと、パニック防止のための館内放送をすぐに行います。
●緊急時の指示・伝達
スタッフは責任者の指示によって次のことを迅速に行います。
・火元、ガス、ボイラーの元栓を閉める。
・階段扉、自動ドア、非常ドアを開放する。
スタッフは館内の被害状況を責任者に報告し、火災が発生している場合は、初期消火と同時に119番通報をし、消防車と救急車を要請します。
責任者がお客さまの避難が必要と判断したら、スタッフはその誘導と非常搬出にあたります。
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■日本ホテルレストラン経営研究所=ホスピタリティ業界(旅館、ホテル、レストラン、ブライダル、観光、介護)の人材育成と国際交流へ貢献することを目的とするNPO法人。同研究所の大谷晃理事長、鈴木はるみ上席研究員が監修する書籍「『旅館ホテル』のおもてなし」が星雲社から発売中。問い合わせは同社TEL03(3868)3275。
(観光経済新聞2025年4月7日号掲載コラム)