【旅館経営ワンポイント講座 23】経営者の生産性を向上させるために 渡辺清一朗


 中小企業の労働生産性が低いといわれて久しい。それを向上させるにはということでさまざまな議論がなされてはいるがいまだに決め手を見いだせずにいる。不毛の議論なのではないかとさえ思えてしまうのは私だけだろうか。

 労働生産性は、投入された労働力に対してどれだけの価値や生産物を生み出すかを測る指標だ。一定期間内に従業員が生み出した製品やサービスの数量や品質を労働時間で割った値を指す。同じ人数の労働者でより多くの仕事を達成することができるかが問われる。

 一方、経営生産性は、組織全体の経営活動において、投入された資源(労働力、資本、技術、時間など)に対してどれだけの価値を生み出すかを測る指標だ。単に労働力だけでなく、資本投資や技術の効果、組織の効率性なども考慮して評価される。経営生産性の向上は、企業全体の競争力や持続可能な成長に直結することは言うまでもない。

 労働生産性は労働者の個別のパフォーマンスや効率に焦点を当てており、経営生産性は組織全体のパフォーマンスや効率に関わる要素を考慮している。ということは、中小企業においては経営者個人の能力にかかっているのではないかとさえ思えてくる。経営者の生産性が向上すれば、当たり前に労働者の生産性がついてくるのではないだろうか。

 少し掘り下げて考えてみると、経営者の生産性は、経営者が企業や組織を適切かつ効果的に運営し、目標達成に向けてどれだけの成果や付加価値を生み出すかを測る指標。経営戦略の策定、意思決定、資源の配分、組織の指導・管理、リスク管理など、経営活動のさまざまな側面に関わる業務に対して適用される。

 経営者の生産性を向上させるためには。

 (1)ビジョンと戦略の策定:経営者は明確なビジョンを持ち、中長期的な戦略を立てることが不可欠。ビジョンと戦略が明確であれば、組織全体を統率し、目標達成に向けた戦略的な意思決定が可能となる。

 (2)意思決定:経営者は迅速かつ正確な意思決定を行う能力を持たなければならない。情報を収集・分析し、リスクと機会を適切に評価し、判断を下すことが求められる。意思決定プロセスを効率化し、重要な問題に対して的確な判断を行うことが経営者の生産性向上につながる。

 (3)リーダーシップ:経営者は組織のリーダーとして、従業員を指導し、モチベーションを高め、チームの協力を促進する役割を果たす。組織の目標達成のために適切な組織文化を醸成し、人材の育成や適切な業務の委任、コミュニケーションの確立など、組織の指導・管理を行わなければならない。

 (4)時間管理:経営者は限られた時間内で多くの業務を遂行する必要がある。優先順位の設定や時間の使い方を最適化し、重要な業務に集中することが求められる。

 (5)継続的な学習:経営環境は常に変化している。経営者は自己啓発に努め、新しい知識やスキルを習得し続ける必要がある。業界の最新トレンドや技術の動向に常に注意を払い、自己成長を促進することが自身の生産性向上につながる。

 経営者の生産性こそが、企業や組織の成果や競争力に大きな影響を与える。経営者こそ自分を律して生きてゆかなければならないことは今に始まったことではない。(EHS研究所会長)

 
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