前回、労働生産性と経営生産性に触れた。最近、労働者でもあり経営者でもある仲間と談笑する機会があり、そこで議論された内容を掘り下げてみたいと思う。
(1)勤勉と怠惰が同居するのはなぜだろう。
1.人は複数の目標や責任を抱えている。時には優先順位が高い目標に向けて勤勉に取り組み、その他の目標に対しては怠惰になることがある。
2.怠惰な行動によって快楽を得られる場合、人間は時には楽な道を選択することがある。努力を続けるにはエネルギーや意志力が必要だが、エネルギーには限界があり怠惰になる。
3.周囲の環境や社会的要因は、行動に大きな影響を与える。社会的に努力が評価される文化では、勤勉な姿勢が促進され、怠惰が許容される文化では怠惰な行動が増える。
4.人間には休息や安寧が必要。怠惰な行動は、体と心の回復のために必要かもしれない。
5.人間は個々に異なる。勤勉な人もいれば、そうでない人もいるのは自明。人間の行動はさまざまな要因によって影響を受けるため、個人差が生じる。
これらの要因が複雑に絡み合って全ての人の中に勤勉と怠惰が同居するのではないだろうか。
(2)人はなぜ努力するのだろうか。それは純粋な欲からくるのではないか。
1.目標達成欲:人は自分の目標や夢を実現するために努力する。目標を達成することで達成感や満足感を得られることが動機となるのは間違いない。
2.向上欲:努力は自己成長やスキルの向上につながる。新たな知識や経験を得ることで、より良い自己を築こうとするのは心地よい。
3.社会的評価欲:社会的な評価や認知を得るためには努力が必要。成功や努力を認められることで、他者とのつながりが深まり自己評価も向上する。
4.克服欲:人生には困難や挑戦がつきものだ。その苦しさを克服することの先に満足を得ることができるかもしれない。
(3)人はなぜ怠けるのだろうか。
1.快楽主義:怠けることによって一時的に快楽を得られる場合がある。楽な方を選ぼうとする心理は誰にでもある。度重なると快楽となるのかもしれない。
2.意欲の欠如:目標や動機が不明確であったり魅力的でなかったりする場合、怠けてしまう傾向がある。
3.環境要因:社会的な圧力や環境によって、怠ける行動が強化されることがある。周囲に怠惰な人が多い場合などその傾向は顕著だ。
4.肉体的精神的ストレス:長時間の努力により疲れがたまると、人は怠けることを選択することが大いにある。
(4)これらのことを踏まえて経営者としての環境整備はいかにあるべきだろうか。
1.努力と快楽と報酬のバランスを考える。
2.モチベーションの変化を容認する。
3.職場環境を整える。
4.明確な目標を掲げる。
勤勉と怠惰は同じ人間の中に共存するのは間違いない。勤勉と怠惰は完全に対立するものではない。人間の行動は常に多くの要素が相互に影響しあって形成されるので、それらが同時に現れるものだと心しておく必要がある。
なんだか、明確な結論の出ないまま蒸し暑い夜は更けてゆく。
(EHS研究所会長)