20年来、ともに旅館ホテルの再生案件に取り組んできた先輩と久々にお目にかかった。数年前体調を壊されたが、完全復活された姿を見ることができてうれしかった。
「コロナ融資の返済も始まり、ここにきて売り案件情報がかなり多くなってきたね」
「そうですね。金融機関の銘柄にもよりますが、次の段階に進めることに積極的になっている感じがします」
「やっぱりそうなんだよね。過去の金融円滑化法後となんだか似てきたような気がする。税金や社会保険料、ましてや借入金利も支払えないのでは、相当な覚悟と手法をもって再生するしかないからな」
こんな話をしながら、再生を依頼されているホテルに向かった。
商売繁盛のためにはお客さまから「支持され、愛され、信頼される」ことが必要だ。従って旅館ホテルの目利きのポイントとしては、人の五感で捉えられることが本当に支持され、愛され、信頼されるレベルにあるかどうかということを確認する必要がある。まずは、五感(見る・聞く・かぐ・味わう・触れる)を働かせてみることだ。
〇周辺・裏動線
周辺の清掃が行き届いていることは当然。従業員や取引業者の出入り口などまで清掃が行き届いているか。ごみ箱・灰皿などの状況はどうか。生ごみや不燃物などはきれいに峻別(しゅんべつ)されて整然と処理されているか。においが充満したりしていないか。お客さまに見えないところの美化は衛生や安全・安心など危機管理につながるので特に注意が必要だ。
〇事務所
正しいあいさつができているか。整理・整頓・清掃・清潔・しつけ(いわゆる5S)を従業員(経営陣を含む)自ら計画的に行っているか。従業員トイレの清掃も自分たちで行っているか。たばこのにおいが気にならないか。社長を含め全従業員の当日の行動予定を誰でも確認できるようになっているか。
〇厨房
経営者が気楽に案内できるかどうかは重要ポイント。明るいあいさつが返ってくるか。床の清掃など衛生管理が行き届いているか。異臭がしないか。電灯の笠、ダクト、桟など料理に落ちてくる可能性のあるところにほこりはないか。食器棚などの整理整頓ができているか。
〇ボイラー室・機械室
整理整頓は言うまでもなく、危険物や工具などがきれいに収まっているか。
〇訪問のポイント
訪問動線や訪問時間を変えてみることも必要。経営者や経理担当者だけでなくいろいろな部署の人たちと積極的に会話すること。できれば出入り業者の話にも耳を傾けてみる。
以上のような調査に加え、必要に応じてお客さま目線での「覆面調査」もあるだろう。一方では、個々の会社について数値情報による定量分析が行われる。周辺地域の状況調査、経済環境分析などは当然のことだ。その結果、情報戦において既に債務者が債権者に負けているということにならないため、早期の決断と相談が必要となることは言うまでもない。
皆さま、本年もお付き合いのほどよろしくお願い致します。
(EHS研究所会長)