【旅館経営ワンポイント講座 29】旅館ホテルの目利きのポイント 渡辺清一朗


 2024年が明けて1カ月、金融的見地からのコロナショックが本格化するのはこれからだが、その一方、徐々にではあるがやる気のある企業の再生への取り組みが活発化しているのも事実だ。

 では、どのような企業が再生の糸口をつかめるのだろうか。旅館・ホテルに絞っての単純な考察。前提として経営不振とはなんだろう。数字に表れるのは売り上げや利益の不振と債務が過剰なこと。損益計算書(P/L)と貸借対照表(B/S)の片方あるいは両方がいびつな状態を言う。以下に決算書から簡単に経営不振を見極める三つのパターンを紹介する。まず、売り上げと借入金の額を確認。借入金については代表者や身内などからのものを除き返済の必要があるものが対象。

 (1)借入金と売り上げがほぼ同額の場合(借入金≒売り上げ)

 売り上げ1千万円、借入金1千万円とする。金利2%、返済期間10年とすると、初年度に支払う金利は20万円、元金は100万円、合計130万円が必要だ。そのためには最低でも減価償却前の営業利益は130万円が必要で償却前営業利益率13%を要する。

 もちろん、金利や返済期間はこの限りではないが、100万円(償却前営業利益率10%)程度の償却前営業利益がない場合は経営不振といえる。

 (2)借入金を売り上げが上回っている場合(借入金<売り上げ)

 売り上げ1千万円、借入金500万円とし金利・返済期間は(1)と同様とすると、初年度に支払う金利は10万円、元金は50万円、合計60万円が必要だ。そのためには6.5%の償却前営業利益を要する。従って、借入金がゼロであれば理論上では償却前営業利益がトントンでも良いとなるが、実際には厳しい資金繰りを余儀なくされることもある。

 (3)借入金を売り上げが下回っている場合(借入金>売り上げ)

 売り上げ1千万円、借入金1500万円とし金利・返済期間は(1)と同様。初年度に支払う金利は30万円、元金は150万円、合計195万円となる。償却前営業利益は19.5%が必要となる。
 もうお分かりの通り、旅館・ホテル経営に赤信号が点滅する目安は、P/Lにおいて償却前営業利益が10%を割り込んだ時、B/Sにおいて売り上げが借入金を下回った時、でありその両方が出現した時には赤信号が点灯しっぱなしと考えてよい。

 では、これらの経営不振状態をどうしたら脱却できるのか。目標値まで売り上げや利益を増やし借入金を減らすしかない。借入金についてはリスケジュールという方法はあるが限度問題ではある。一歩踏み出して金融機関と債務減額の交渉が必要かもしれない。

 それでは、金融機関との交渉に必要なことは何だろうか。まずは、償却前営業利益を10%以上計上し「この経営者は必要な人材だ」と思わせること。自ら身を切り場合によっては退陣の覚悟を示すことも必要だろう。

 「天空にはあまたの神様方。八百万の神やギリシャ神話の神々が時空を超えて語らいながら駒を動かして遊んでいる。突然とんでもないところに動かしたり、倒したり、戻したり、投げたり、取ったり。この駒はいいとか、こいつはダメだとか、よく頑張ったとか、もうちょっと、なんていいながら遊んでいる」「その駒が俺たちか。神様チェス理論やね」

(EHS研究所会長)

 
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