【旅館経営ワンポイント講座 34】三つのティーアイオーエヌ 渡辺清一朗


 気が付くと、ここのところ20代30代の若者たちと触れ合う機会が多い。学生、サラリーマン、起業家に関係なく軽やかに自由に前を見つめているように感じる。

 そんな若者から「先輩が自分たちの年齢だったころのことを聞かせてください」と聞かれることがあった。その時、鮮明に思い出したことがある。

 「渡辺、人間が生きてゆくためにはなあ、三つのティーアイオーエヌ(TION)が欠かせないんだよ。組織で生きていくため、抜きんでるためにもそのことが肝だ」。

 40年近く前、社会人として駆け出しのころ、かわいがってくれた先輩が口癖のように言ってくれた言葉だ。

 一つ目はcommunication(コミュニケーション)。人と人とが思いを伝え合って交流を図ること。人は1人では生きてゆけない。

 二つ目はmotivation(モチベーション)。動機付け。目標に向かって行動し続けるための原動力を維持するにはきっかけが必要だということ。

 三つ目はambition(アンビション)。野心・大志・願望。立派になりたい、成功を収めたいと思う心。

 「俺たちは人だけど、生きてゆくためにはジンカン(人間)であることを忘れるなよ」と先輩が必ず付け加えていたことも懐かしく思い出す。

 今となれば聞き慣れてしまった三つの言葉ではあるが、20代の私にとってはとても新鮮だった。自分自身の行動規範、人や組織を動かすときの視点などとして、世の中がいかに変わろうとも思考と行動の根っことして忘れたことはない。

 パラダイムシフト、DX、SDGsなどという言葉はそろそろ聞き飽きたなと思っている一方で、常識や価値観の変化という日常はとどまるところを知らずに進んでゆく。

 「三つのTION」についても、公私にわたって直に触れあうことなく離れたコミュニケーションは当たり前になる。コミュニケーションの相手が人なのかそうでないのかも判断が難しい。世の中をよくしたいと思いつつも、明日も生きてゆくこと自体がモチベーションになるかもしれない。混沌(こんとん)の向こうには今まで考えられなかったようなアンビションを実現できる世界が待っているのかもしれない。変化には際限がなく、来月、来年のことなんてわからない日常が当たり前となってしまった。

 そんな時代を生き抜いてゆくためにも「変化する3ション」を意識することは無駄ではない。

 事実としてこれまでは「強い、賢い、ずるい」人たちが幅を利かせてきたし、そのこと自体に大きな変化はないかもしれないが、これからは「いついかようにでも変わることができる」人が困難を突破し未来へのカギを手にすることができるという事象をたくさん見聞きする世の中になると信じたい。

 必要ならば、メール(sero-1117@giga.ocn.ne.jp)やSNSでコミュニケーションを行いアンビションにつなげましょう。

(EHS研究所会長)

 
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