前回は集客プロモーション手法の手がかりとなる考え方についてお伝えした。そして文末に、改めて力を入れるべき対策方向をいくつか示した。その中で「パブリシティ」について、少し掘り下げておきたい。豊富な資金力を持たない旅館にとって新たな市場開拓を図る有効な手段でありながら、あまり活用されていないと思われるからである。
(1)パブリシティとは
報道機関などに情報を流して、マスメディアなどに報道を促す広報活動のことであり、広告とは違う。「など」としたのは、今日こうした情報の媒介が、必ずしも報道機関、マスメディアだけではなくなってきたからだ。
なおパブリシティのうち、有料のもの(ペイド・パブリシティ)は、いわゆる広告と本質的に同じであり、見せ方が違うだけなので区分して捉える。
(2)ニュースリリース
パブリシティを行うための具体的な方法は、報道機関などに向けて「ニュースリリース」(=ニュースを発信)することである。書面で編集部宛に郵送、またはFAXで送信するのが一般的だが、デジタル化が進展した現在は、こうしたものもデータで送ったり、自社サイトで公開したりするようになった。また、こうしたリリース情報をまとめて配信する専門サービスもある。
(3)まずはローカルから
情報を一気に広めるには、全国ネットのテレビ局や全国紙などに取り上げてもらうのが理想だが、これはかなりハードルが高い。そこで方法として、まずはローカルの番組や紙面に取り上げてもらうことを目標とするのも手である。地方の記事の中から、面白いものが全国版にすくい上げられることも多いからだ。情報の送り届け方法だが、地方の支局ならば、まずは編集部などに直接電話をかけてみよう。そこでざっとした概要を話し、相手の個人名を特定してから送るようにすれば、取り上げてもらえる確度も高い。
(4)ニュースリリースのポイント
リリース情報のまとめ方には、それなりのコツがある。そのポイントを示そう。なお、以下に述べることはニュースリリースに限らず、チラシやDMなどの広告、各種の案内物などにもだいたい同じことが言えるので、応用していただきたい。
(ⅰ)簡潔・明快なヘッドライン
まず全体の見出しとして「ヘッドライン」を掲げる。伝えたいことを一文に要約したタイトルだ。これがないと、そもそも何について書かれたニュースなのか分からない。全部読まなければ分からないような情報に付き合っているほど、相手も暇ではない。
(ⅱ)そそる言葉
ヘッドラインの良し悪しによって、「おっ! なんだ?」と読まれるか、「つまらなそうだな」とゴミ箱行きになるかが決まると思った方がよい。一言一句、研ぎ澄まされた言葉を選ぶことだ。できればそこに、興味をそそる言葉、「??」と謎かけのような言葉を入れよう。「業界初」「4つの不思議」「ありそうでなかった…」など。普通あまり同居することのないミスマッチな言葉の組み合わせも効果的だ。「旅館でものづくり」「離乳食と日本料理」なんてのはいかがだろうか。
次回も引き続きニュースリリースのポイントについてお伝えしたいと思う。
(リョケン代表取締役社長)