「『…頼みの経営』から抜け出す」ために掲げた七つの「原理原則」のうち、「品質向上―劣化を放置しない、磨きをかける」について、前回に続き考えていく。
(3)不備・不具合は早めに直す
施設や備品は時とともに劣化が進む。それを防ぐのがメンテナンスや修繕だ。このイメージを図に表してみた。横軸が時間の経過、縦軸が変化する品質の程度(良し悪し)を表す。仮に、しかるべきメンテナンスや修繕によって状態が100%元に戻るとすると、品質のレベルは図のようなノコギリ歯の形状を描くことになる。
メンテナンスや修繕をこまめに行った場合は上の図のようになり、平均的な品質水準は一点鎖線(―・―)で示したライン(A)辺りとなる。しかしこれがより長い期間放置された場合、下の図のようにノコギリの歯は大きくなり、平均的な品質水準も(B)まで下がる。つまり上と下では、提供する商品の平均的な品質レベルが違うことになる。より重要なのは、「好ましくない状態」で提供する期間が長くなることだ。仮に上の図における修繕直前の状態が「許容できる最低レベル」だとすれば、下の図ではこれを下回るレベル(淡いグレーの部分)の期間が、なんと全期間の半分以上もあることになる。あくまでも模式図であって、実際は必ずしもこの通りではないが、これだけの期間、いわば「不良品」の状態で提供する(=売る)ことを「問題」と認識し、不備・不具合は早めに解消したい。
ところでお気づきかと思うが、上図の方が修繕回数は多くなるので、費用面の損得では一概にどちらが良いとは言えない。もっとも、一般に劣化は軽微なうちに直した方が、総体的なコストは安くつくといわれる。
(4)劣化放置の要因
いずれにせよ、ここで問題としたいのは、品質レベルというものを「意識すること」と、それへの「対処のあり方」である。
劣化が放置される要因は、直すお金がない場合を別として次の三つにある。
(ⅰ)感性(美意識)の欠落
(ⅱ)見慣れ
(ⅲ)規範の不在
放置はこの三つが重なったところで起こる。言い換えれば、このうちどれか一つでも改善されれば、品質劣化の放置は防ぐことができる。次回はこのことについて話を続けたい。
(リョケン代表取締役社長)