【日旅連総会特集】日本旅行執行役員事業共創推進本部長 吉田 一成氏に聞く主要分野の2025年重点施策


 日本旅行の2025年度事業について、日旅連との関係も含め、主要分野の担当役員4氏に話を伺った。(聞き手=本社・森田淳)

パートナーとの共創拡大でさまざまな社会課題を解決



 ――事業共創推進本部について。

 吉田 コロナ禍で従来の事業だけでは会社が立ち行かなくなったという状況を踏まえて、事業領域の拡大、新たな事業を創造するという部署が求められて2021年に設置した。

 われわれが創業から120年間、旅行業で培ったコンサルティング能力を広く使うとともに、アライアンスパートナーとの共創を拡大することで、さまざまな社会課題を解決する、地域や顧客が求める価値を創造し対価を得る、という取り組みをしている。



 ――旅行業以外の取り組みを進めていると。

 吉田 完全に切り離しているのではなく、旅行業も手段の一つとして、地域を含めたお客さまの課題を解決する、新たな価値を創造するためのあらゆる策を講じようという目的で、各事業を推進している。



 ――具体的な取り組みは。

 吉田 2年前から本格的に、ふるさと納税の運営事務局の業務を担っている。後発なので苦労をしたが、いくつかの自治体から受託をして、現在進めているところだ。

 宿泊素材はもちろんのこと、地元の事業者が提供する物産開発などのお手伝いもしている。事業者からは、普段のお客さんとは違う人々に商品を提供するプラットフォームができたと喜ばれている。

 北海道の大樹町では、町と協定を結んだ上で、宇宙をテーマとした地域づくりを、宇宙関連のスタートアップ企業とも連携し、取り組んでいる。大樹町はロケット専用の空港を国策で造っている町だ。インバウンドや教育旅行に関する素材開発、道の駅の磨き上げ、その他、補助金を活用したさまざまな事業を行っている。

 福井県では、新幹線の敦賀延伸を契機に何かできないかと、JR西日本、地元自治体、高校と産官学連携で、観光開発の推進プロジェクトを立ち上げた。当本部に限らず、全社で横断的に取り組んだもので、インバウンドに対するPR事業や、首都圏からの修学旅行誘致、さらには特産品のヨーロッパでの販路開拓に取り組んだ。高校生に関しては、観光開発の取り組みを通じて地元の良さを見つめ直すという効果もあった。これらの取り組みは岡山県はじめ他県でも横展開を行っていく。



 ――今年の新たな展開は。

 吉田 「インバウンド」と「労働力」と「サステナブル」。これら三つが地域が抱える三大テーマだと認識している。

 その中でまずは労働力の問題に取り組もうと、当本部内に「グローバル人材活用推進チーム」を設置した。JR西日本と連携の上、外国人材の受け入れ、ひいてはサステナブルな共生社会の実現に向けて取り組みを進めている。

 サステナブルについては、環境省とJRグループ7社、日産自動車などと手を組み、サステナブルな旅行環境の整備、今あるニーズへの対応を目的に、新たなツーリズム「グリーンジャーニー」を提唱している。単にエコな商品を開発するのではなく、地域の魅力を最大限に引き出し、お客さまに感じていただくための仕掛けを産官学連携で創出している。

 国の「スタートアップ・エコシステム拠点都市」の形成事業に参画するスタートアップ企業との連携も積極的に推進している。

 近年、食事制限の多様化が進む中、喫緊の課題である外食および中食での安全な対応を図るため、関係するスタートアップと「一般社団法人外食アレルギー対応協会」を発足した。旅館・ホテルの皆さまとも連携を図り、旅行関連業界の環境整備に努めたいと考えている。



 ――労働力の確保は旅館・ホテルで喫緊の課題となっている。

 吉田 既に数軒の旅館で当社からの外国人材を受け入れていただいている。しっかりとした人材を見極め、確保することが重要だが、われわれは広く諸外国の大学と連携を結び、場合によっては学生の段階からインターンで働いてもらうなど、しっかりとしたステップを踏んで取り組んでいる。

 ニーズにお応えする機会がこれからさらに増えると思う。しっかりと準備をしたい。



 ――旅館・ホテルに資する部分でこのほか。

 吉田 広域連携DMOに関する業務において、地域の旅館・ホテルとの連携は、むしろ旅行会社の得意とする分野。われわれが何か手助けができないかと考えている。



 ――日旅連会員に向けて。

 吉田 地域づくりを推進するわれわれにとって重要なパートナーだと認識している。

 旅館・ホテルは地域文化の担い手。建築や食や温泉文化、おもてなしなど、地域の魅力を伝えられるのが旅館・ホテルであり、日旅連会員の皆さまだ。今後もさまざまな面で連携を深めていきたい。

吉田執行役員
吉田事業共創推進本部長

 
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