【日旅連総会特集】日本旅行執行役員DX推進本部副本部長 七海 聡子氏に聞く主要分野の2025年重点施策


 日本旅行の2025年度事業について、日旅連との関係も含め、主要分野の担当役員4氏に話を伺った。(聞き手=本社・森田淳)

社内外のデジタル化を推進 新たな価値創出、誘客拡大へ



 ――DX推進本部のミッションについて。

 七海 「人を活(い)かし地域の社会課題の解決を目指すDX推進」を基本方針に掲げ、社内外のデジタル化を推進している。コロナ禍を経て、旅行業にとどまらない事業展開となっており、各事業分野で必要となるデジタル化にも取り組んでいる。



 ――昨年度の取り組みと成果、今年の取り組みは。

 七海 経産省の「DX推進指標」をベースに、IT統制、新たな価値の創造、主要事業におけるDX推進、社内DX基盤の醸成など、四つの領域において、それぞれの取り組みを進めている。その全てを網羅するDX推進テーマの一つが、「AIの活用」である。

 昨年度は、今後の本格的な展開に向けて、生成AI(ChatGPT)の社内利用環境を整備した。まずはガイドラインを制定、全社員を対象とした研修や社内ウェビナーを実施するなど、社員全員が、自ら使える環境を整えることにより、社内リテラシーの底上げを図った。

 その結果、業務面では、会議の議事録作成や、お客さまへの提案書のブラッシュアップ、コールセンターの対客業務における活用推進など、業務効率化の取り組みが進行した。一方で、AIを活用したサービスに関するプロジェクトを立ち上げ、若手社員を中心に事業の創出を目指した取り組みも進めてきた。

 今年は、昨年までの展開をベースに、社内におけるAIの専門家育成に着手、社内基盤の一つ「日本旅行総研」の中に、「AIラボ」を立ち上げる。社内の各部署から人材を集約、全社で30名程度を選抜し、AIスキルの強化・ナレッジの蓄積を行うことで、部門横断での新たな価値創出につなげる。こうした一連の取り組みを通じて、「AIを活用し社会課題を解決できるDXコンサルタント」の育成を目指す。



 ――主要事業領域、ツーリズム事業での推進は。

 七海 DX推進テーマとして、デジタルプロモーションにも力を入れている。その一つが、当社で運営しているオウンドメディア「Tripα(トリパ)」の進化である。

 これまでは、主に地域の旬の情報をレポート風に発信、お客さまをツアーに誘導する導線として位置付けてきたが、集積してきたツアーデータの活用などにより、デジタルコンテンツとしての磨き上げを目論んでいる。

 具体的には、「地域応援メディア」として、ファンコミニティの実装や、プラットフォーム化などを検討していきたい。この領域は、当社の本業である旅行業での経験値が最大の強みであり、デジタル上のプロモーションの深度化により、海外を含めた多くの方々に地域をアピールし、送客の拡大、さらには新たな観光開発まで進めていきたいと考えている。



 ――双璧の主要事業領域、ソリューション事業での推進は。

 七海 自治体向けの提案営業が主要事業領域の一つとなり、地域づくりへの関わりが不可欠な要素となっているが、一例として、メタバース(仮想空間)を活用した事業創出に取り組んでいる。

 これまで、コミュニケーション重視型メタバースの展開として、少子化対策の婚活イベントや、不登校児童に対するケア、採用活動におけるマッチングなどの自治体ソリューションのほか、教育事業や、MICE誘致など、さまざまな領域においてニーズを発掘してきた。

 今後は、情報発信型メタバースの展開として、プロモーション領域においても活用推進を図りたい。

 具体的には、JR西日本がメタバース上に開設する「バーチャル大阪駅」をグループ一体運営で訴求していきたい。来場者は海外、若年層の比率が高く、オープンから延べ来場者数2千万人を突破、現在、1カ月平均200万人が交流する場として機能している。今年の大阪・関西万博を契機とした経済効果を見据え、次世代プロモーションを展開したい。



 ――日旅連の会員に向けて。

 七海 当社は「社会課題解決を軸とした事業運営の確立」を目指している。DXの分野では、デジタルを活用した社会課題の解決を、ステークホルダーの方々と共に取り組みたいと考えている。

 当社の事業推進には日旅連の皆さまとのさらなる連携が不可欠。これまでの旅行業で培った相互の経験、データをDXの力でさらに活用し、地域の課題である誘客拡大、関係人口の増大につなげていきたい。引き続きのご協力をよろしくお願い致します。

七海執行役員
七海DX推進本部副本部長

 
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