【日旅連総会特集】日本旅行常務取締役ソリューション事業本部長 吉田 圭吾氏に聞く主要分野の2025年重点施策


 日本旅行の2025年度事業について、日旅連との関係も含め、主要分野の担当役員4氏に話を伺った。(聞き手=本社・森田淳)

事業の五つの柱をさらに太く強く



 ――昨年の振り返りを。

 吉田 新型コロナ感染症が5類になった2023年5月以降、コロナ禍の主要な受託事業であったワクチン接種関連事業が昨年3月末を境に全国で事業終了となり、コロナ禍後の旅行需要が回復するまでの端境期となった。この状況でどうソリューション事業を進めるか思案したが、地域の課題解決という基本は変わらず、そのスタンスで臨んできた。

 これまでのワクチン接種関連事業は規模が非常に大きく、それが一気になくなったので、ソリューション事業の収益としてはコロナ禍と比べて減少した。ただ、さまざまな取り組みが少しずつ芽を出し始めている。

 例えば地方における修学旅行の誘致。昨年、北陸新幹線の敦賀延伸を契機に福井県で行ったのが、地元の生徒たちに地元素材を使った修学旅行のコンテンツを開発してもらい、全国にPRする取り組み。開業1年前から当社の社員が講師となって福井県内の五つの高校で授業を行い、生徒たちに修学旅行で実施できそうなコンテンツを開発してもらった。

 新幹線が開業した3月にはシンポジウムを行い、全国の高校生と教諭合わせておよそ300人を招待した。首都圏の学校などは、福井県を修学旅行の行き先としてあまり認識していなかったが、昨年修学旅行で実際に来ていただき大変好評だった。また、地元の生徒たちにとっても地元の良さを発見・再認識することで地元への愛着が深まるなどの大変良い影響があった。



 ――企業・団体については。

 吉田 旅行関係の需要が戻り、特にMICEの需要が急激に戻っている。こうした需要の取り込みも行いながら、企業・組織団体に対するアカウントセールスも推進してきた。

 地域や社会課題に対し、具体的な提案を打ち出せたことは意義深い。日産自動車などと立ち上げた「グリーンジャーニー」は、単なるエコツアーではなく、サステナブルな取り組みが必要だというムーブメントを社会に起こすことで地域社会への影響は非常に大きかった。

 その他の取り組みでは、「脳体力」のチェックとトレーニングのプログラム「CogEvo(コグエボ)」を企業や自治体などへ提供している。旅行に限らずさまざまな角度から企業・団体のソリューションを図る取り組みを昨年は進めることができた。



 ――今年の重点施策は。

 吉田 今年も昨年の取り組みを踏襲しつつ、中身の充実と量の拡大を図っていきたい。

 当社のソリューション事業は、自治体などを対象とした公務・地域ソリューション、学校に向けた教育ソリューション、企業向けの企業ソリューション、そして企業の旅行や出張に関わるビジネストラベル、インバウンドの五つの柱からなる。どれも一定の収入規模となってきたが、それぞれの柱をさらに太く強くしなければならない。

 地域におけるソリューションは、旅館・ホテルを含めた着地と発地の両方の目線で取り組むことが大事だと考えている。



 ――地域におけるソリューションについて、現在進んでいるものをいくつか。

 吉田 「教育旅行サポートセンター」を立ち上げた。修学旅行や遠征の手配を旅行会社ではなく、自らで行わなければならない地方の学校がある。旅行会社の支店が地方から撤退し、結果的にサポートがない中で旅行を実施せざるを得ない学校にとって不安な状態になっている。新たな部署は、そのような学校とのやり取りをウェブやリモートでさせていただき、旅行に関する不安を解消するものだ。

 着地におけるソリューションでは、旅館・ホテルの人材不足の問題が表面化してきている。当社は外国人材の紹介に力を入れており、現在数軒の旅館で、約三十人以上が働いている。

 コロナが明けてお客さまが戻っても、働く人がいないために部屋を満室にできない旅館・ホテルが多い。全ての客室を埋められるように、人材の供給面でお手伝いができればと考えている。

 今は他社との協業で行っているが、いずれは当社自身が特定技能外国人の登録支援機関になろうと考えている。



 ――外国人材の供給へ、海外の大学と協定を締結している。

 吉田 昨年8月に中央アジアのキルギスの二つの大学と人材育成、日本での就労機会提供に関するパートナーシップ協定を締結した。この2月には同じ中央アジアのウズベキスタンの三つの大学と同様の協定を締結した。キルギスの大学では日本文化や地域観光について実際の講義(リモート)をしている。日本旅館のサービスなどにも非常に興味を持たれており、機会があれば旅館の皆さまにも講義していただければと考えている。

 今まで旅行事業だけを行ってきた当社は、コロナ禍を経て、それ以外のさまざまなこともできると分かった。多くの視点で旅館・ホテルの皆さまのお役に立ちたいと考えている。



 ――日旅連の総会が開かれる。会員に一言。

 吉田 コロナの期間中、送客も含めて皆さまへの貢献がほとんどできず、心苦しかった。当社は今年、創業120周年を迎えるが、長い間、会員の皆さまから受けたご恩を今こそお返ししなければならない。

 皆さまへの送客、コンテンツ開発など、発地、着地双方でのソリューションをこれまで以上にしっかりと進めていきたい。

吉田常務取締役
吉田ソリューション事業本部長

 
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