【日本政府観光局インバウンド最新リポート 116】豪州で訪日旅行ブーム 需要拡大 さらなる地方誘客を JNTOシドニー事務所 島田優太次長


 「新年までオフィスには戻りません。1月6日以降に返信します」―12月頭に送ったメールにこんな自動返信が返ってきた。一般的に豪州は労働者保護が強く、休暇が長い傾向がある。また、平均給与は日本の約2倍のため旅行中の消費意欲も旺盛である。観光庁が実施した「訪日外国人消費動向調査(2023年)」(以下、調査)によれば、時期により数字と順位は異なるものの、平均泊数は13.8泊と長く、消費単価は34.1万円と調査市場中1位である。

 高い人件費に裏打ちされ国内の物価も高い。また、新幹線等の高速鉄道がないため国内の都市間移動は飛行機が主だが、寡占で価格競争が働かず航空券代も高くなる傾向にある。すると必然国内旅行費用も高くなり、物価が比較的安い国への海外旅行が多くなる。人口約2700万人のうち海外旅行人口は約1100万人と非常に多い。

 豪州当局の統計によれば、オーストラリア人の海外旅行者数は2024年1月から11月の累計で約1075万人(2019年同期比2%増)とコロナ前の水準に回復した。対して訪日オーストラリア人数は1月から11月までの累計で80万人超と、2019年の年間約62万人をすでに20万人近く上回り、空前の日本旅行ブームとなっている。

 日本からすると豪州は遠いイメージがあるが、豪州から海外はニュージーランドやインドネシア、太平洋諸島以外どこに行っても遠い。オーストラリア人にとって日本へのフライト約9時間はあまり長い印象がなく、時差が小さいため快適な部類に入る。姉妹都市の自治体数は日本が1位、人口当たりの日本語学習者数も世界1位と、日本は実は大変身近な国である。

 訪日ブームを裏付けるように、2019年は34%だったリピーター割合(観光・レジャー目的。以下同じ)は2023年に39%と上昇しており、それに呼応してゴールデンルート以外の地方の需要が高まっている。商談会やイベントでは必ず旅行会社や一般消費者から「ゴールデンルート以外のおすすめは」「まだ知られていない新しい目的地は」といった質問を頻繁に受ける。

 調査の「次回の訪日旅行でやりたいこと」の各項目の回答率を2019年と2023年で比較すると、増加幅が大きい順に「日本の歴史・伝統文化体験」「自然・景勝地観光」「自然体験ツアー・農山漁村体験」「旅館に宿泊」と並ぶ。これらは地方でこそ豊富なコンテンツでもある。JNTOシドニー事務所でも、阿蘇でのE―Bikeや屋久島でのトレッキング等の自然体験に主眼を置いたアウトドアメディアの招請、和紙作り等伝統文化体験を含め、ゴールデンルートから先の行程を意識した広島(尾道・西条等)と愛媛(松山・大洲等)へのメディア招請など、ゴールデンルートから1歩先の地方での自然・伝統文化体験に焦点を当てたプロモーションを展開している。今後も地方への誘客に注力するため、豪州からの誘客にご関心のある方はいつでもJNTOにご連絡いただきたい。


(観光経済新聞2025年1月27日号連載コラム)
    

 
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