
訪日旅行博(FITフェア)では訪日を具体的に検討する多くの来場者でにぎわった(画像を一部加工しています)
2024年の訪日タイ人数は約115万人と前年比15%増を記録したが、現在、タイ発の海外旅行先では中国の人気が著しい。ツアー料金が安価なことに加え、昨年3月からタイと中国の間で査証免除での往来が可能になったことが最大の理由だ。これまで訪問に査証が必要であり、未訪問者が多い中国が、タイ人にとって目新しい目的地となるのはある意味必然である。
しかし、訪日者の8割がリピーター、4割が訪日5回目以上であるタイ市場において、日本に対しても「目新しさ」のニーズは変わらず大きい。1月にバンコクで開催された国際旅行博「TITF」においては、「Unseen(地名)」(例=山陽山陰、四国等)というツアー名の訪日旅行商品が多く販売されていた。これはリピーターの多い日本ツアーならではの表現で、日本における「まだ見ぬ」観光魅力を求める訪日リピーターが多いことの証左と言える。
「Unseen」を求める点では、目的地のみならず、観光コンテンツも同様である。「タイ人にとって今後の日本の地方エリアへの訪問意向を高めるものは」との問いには、花見・紅葉・雪景色41.6%、その土地ならではの文化40.2%、その土地ならではの飲食38.6%(VJ重点市場基礎調査・2024年1月公表)、「訪日旅行で何をしたいか」との問いには、自然観光(山・湖など)58%、食事・グルメ55%、温泉・旅館宿泊34%、伝統文化鑑賞・伝統工芸品購入24%(JNTOバンコク事務所主催の訪日旅行博「FITフェア」アンケート・2024年11月)、との回答があった。
四季の変化に乏しいタイにおいては、それを感じることができる自然観光が最も人気であるが、リピーター化の進展に伴い、「その土地ならでは」の伝統文化等「日本らしさ」の体験への関心も高まっている。例えば、今年度のタイの旅行会社招請事業では、お寺で住職と一緒にお札に願い事の焼き印を押し、自分で選んだお守り袋にお札を入れ、それを観音様の御前にお供えして御祈祷してもらう、「住職とのオリジナルのお守り作り」が「ここでしかできない」「自分だけの」体験として行程の一番のハイライトになった。
「日本らしさ」の体験に対する満足度向上には、その背景やストーリーの理解が肝要だが、複雑な説明は好まれないため、(できればタイ語で)シンプルに分かりやすく伝える工夫や、その土地ならではのナンバーワン、オンリーワンの魅力伝達が好まれる。上記の「FITフェアに来たきっかけ」も、「JNTOサイト・SNS」に次いで多いのが、「友人・知人・家族による情報発信(口コミ・SNS等)」であり、こうした目新しい体験コンテンツの満足度を向上させることが、来訪者のリピートはもちろん、個人のSNSでの発信にもつながる。当地では旅マエの情報収集手段として最も利用される手段がFacebookであり、旅行者一人一人が、満足した体験を発信するマイクロインフルエンサーの役割を果たすことになる。
訪日旅行博(FITフェア)では訪日を具体的に検討する多くの来場者でにぎわった(画像を一部加工しています)
(観光経済新聞2025年2月24日号掲載コラム)