【日本政府観光局インバウンド最新リポート 31】英国から地方への誘客 JNTOロンドン事務所 柿崎 茂 次長


メディア露出、SNSで促進

 英国における日本は、旅行先としての認知度は高いものの、観光・レジャーを主目的とした訪日旅行者の74・6%が初回訪問(観光庁「訪日外国人消費動向調査」2016年)であり、「一度は行きたい旅行先」というのが一般的な印象である。日々の業務でも日本への関心の高まりを感じるが、依然、東京、京都を中心に新幹線沿線上のいわゆるゴールデンルートの人気が高い。

 今回は、JNTOロンドン事務所における日々の業務の中で、一般旅行者、英国メディア、旅行会社などと接する中で見えてくる英国市場のニーズを紹介し、地方誘客に向けた取り組みについて考えてみたい。

 個人旅行者からの問い合わせは、やはりゴールデンルートの観光情報についてのものが大半を占めるが、その他の傾向として、季節により北海道へのハイキング、スキー、沖縄のビーチやクルーズなども人気で、現地に着いた後の観光情報のほか、アート、建築などテーマを特定した情報や、鉄道パスの購入・使用方法、旅館の手配の仕方、民宿の泊まり方などのハウツーものなどが挙げられる。

 一方で、英国のメディアからは、ニュース性のある新しい情報に関する問い合わせが多い。ストリート・フードから高級レストランまで、飲食店の新規オープン、宿泊施設の開業、改装、新たな観光列車、アート関係のイベント、アクティビティなどへの関心が高い。エリアとしては、東京に関する問い合わせが個人旅行者同様に圧倒的に多く、その他では、ビーチリゾートを好む人が多いことから、沖縄の情報提供依頼もある。

 訪日ツアーは、顧客の大半が初訪日であることもあり、すでに旅行先として評価が高く、顧客に勧めやすい桜シーズンのゴールデンルートの本数が多い。その一方、近年は旅行番組で日本が取り上げられるほか、日本の自然、文化を紹介する番組が増えた影響から、顧客からその地域に行きたいとの相談が旅行会社にあり、個人向けのオーダーメイド・ツアーを中心に地方への送客が進んでいるようだ。

 このように、メディアの影響力に鑑みると、地方の認知度を上げ、誘客を図るには、まず、英国内のメディアに取り上げられることが効果的だと考えられる。より多くの露出につなげるには、新しい情報を提供するだけでなく、金銭的な支援を含め、写真、映像の提供や撮影許可などを迅速に行う態勢があることが望ましい。近年、ロンドン事務所でも、東北、三重・和歌山、九州などへ英国のメディアツアーを実施している。いずれも日本が想像以上に自然豊かであることや、旅館など日本にしかない体験が印象に残るようで、ジャーナリストたちに非常に好評である。

 その他にも当所では、日本の地方の魅力を伝えるため、SNSを通じて、各地域の食、宿、文化、アートなどの印象に残る写真を集中的に発信し、旅行を疑似体験できるような企画を開始しており、「こたつ列車」などの意外性のある投稿や息を飲むような風景などへの反響が多い。今後も、日本の地域と一体となって、英国市場に響くような新しい情報や日本の魅力を伝えていく所存である。

 

 

 
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