ムスリムの市場拡大が鍵
近年、インドネシアの実質経済成長率は毎年5%を維持し、1人当たりの名目GDPも直近10年間で2210米ドル(2008年)から3876米ドル(2017年)と成長を続けている。また、インドネシアの人口は約2.6億人(世界第4位)であり、平均年齢30.2歳であることから、豊富な労働人口を背景に経済成長は続くと考えられ、訪日客数増加に向けて今後のさらなる成長が期待できる市場だ。
最新のインドネシア人訪日客数は2017年に35.2万人(対前年比約30%増)。2018年は1月~7月までで24万人超(対前年同期比約16%増)を記録し、年間40万人を突破する勢いを保持している。インドネシア人の訪日ピークは、4月の桜の時期、断食明け大祭を意味するレバラン休暇(2018年は6月中旬で毎年10日程度前倒しとなる)、12月の学校休暇となっているが、近頃は紅葉や雪といった秋冬の魅力についても認知が定着しつつあり、この時期の訪日客数も増加している。旅行形態は、FIT化が進んでおり、ウェブサイトやSNSからの情報収集により旅行先を決め、オンラインやトラベルフェア(旅行商品即売会)において航空券を購入する人が多い。
ジャカルタ事務所が実施したアンケート結果では、インドネシア人訪日客の約6割は初訪日であり、東京―大阪間の旅行(ゴールデンルート)が人気となっている。
さらに、同アンケート結果によると、インドネシア人訪日客の約6割は中華系富裕層を主体としたキリスト教徒である一方、人口のおよそ9割を占めるイスラム教徒(ムスリム)は、訪日客の3割程度であった。この層をいかに開拓することができるかが、今後のインドネシア市場拡大の鍵になるだろう。
日本におけるイスラム教徒への対応については、年々、国内各所での対応が進んでおり、「Global Muslim Travel Index 2018」(英国調査会社による調査結果)によると、ムスリム協力機構加盟国を除いた国のうち、日本はムスリムへの順応度において世界第4位となった。
ムスリムの受け入れ環境整備では、ハラルの認証を取得することだけでなく、ピクトグラムによる豚肉および酒の使用の有無、ムスリム用の食器の提供など、ムスリムに対して提供するサービスを目に見える形にし、飲食の可否などの判断基準を示すことが重要である。
こうしたイスラム教の文化に対応した受け入れ態勢をさらに日本各地で整えていくことに加え、現在の訪日客の多くは英語によるコミュニケーションが可能ではあるが、今後、経済成長に伴う訪日客層の多様化に対して、英語だけではなく、インドネシア語での情報発信が不可欠となっていくであろう。
2018年は、日本インドネシア国交樹立60周年という節目の年であり、インドネシア国内でも「日本」が話題になっている。ジャカルタ事務所では国交樹立60周年に伴う訪日旅行機運をさらに促進させるようプロモーションを推進していく。