付加価値向上で受け入れを
米国からの訪日旅行者数は2015年に史上初めて100万人を超え、18年にはその記録が更新され、150万人を突破した。わずか3年の間に50万人も増加し、訪日米国人旅行者数は1.5倍となったわけである。これもひとえにオールジャパン体制での訪日旅行プロモーションが奏功した結果と言え、皆さまの米国での取り組みにこの場をお借りして感謝申し上げたい。
さて、米国の特徴として、世界の国内総生産の約24%を占めるだけでなく、個人消費部門でも世界の約30%を占めるほど消費が旺盛な経済大国であることが挙げられよう。これは米国からのアウトバウンド旅行者数にも顕著に表れ、米国商務省によれば、17年の国外旅行者は8770万人でカナダやメキシコといった隣国への陸路出国を除いた海外(国外)旅行者数でも5200万人であるから驚きである。そのうちアジアへの旅行者は577万人であることから日本が150万人というのはまだまだ通過点に過ぎないところである。
米国のもう一つの特徴は、富裕層人口の多さだ。総資産が100万米ドルを超える世界の富裕層のうち、米国が約40%を占めているともいわれており、事実、米国からの訪日旅行者のうち、世帯年収が12万米ドルを超える層は45%以上である。米国の国勢調査によれば、こういった層が多く住む世帯年収の中央値が6万米ドルを超える州は16州あり、カリフォルニア州、ニューヨーク州、ワシントン州、コロラド州、ミネソタ州、イリノイ州、ヴァージニア州、マサチューセッツ州など日本との直行便が就航する地域とほぼ一致している。
現在、ITやモバイルの発展に伴い、オンライントラベルエージェントの旅行取扱高が伸びる一方で、従来型の旅行会社についても、特別手配のツアーやクルーズ商品など富裕層向けに付加価値を施した旅行商品を扱うことで、旅行会社の市場規模は成長を遂げていると推計されている。
JNTOロサンゼルス事務所では、こうした富裕層の誘客強化のため、富裕層を扱う旅行会社が集まるコンソーシアムにおけるプロモーション活動を強化している。プロモーションを通して感じることは、富裕層といえども金に糸目をつけないわけではなく、価値がないと思えば、簡単には支出しないシビアな面を持つため、そこでしか体験できない、まだ誰も知らないといった希少性や特別感を演出した商品としての磨き上げとその提供により、価値を認めた対価として、初めて富裕層も納得して支出をいとわない状況が生じるということだ。
当事務所では、富裕層コンソーシアムの一つ「Ensemble Travel Group」の米国、カナダ、それぞれにおける売り上げトップ25の旅行会社などの約150人を、北米最大手の船社であるプリンセスクルーズ社と連携して19年5月に日本へ視察旅行を誘致することに成功した。日本のクルーズ旅行を契機として、地域の魅力を北米富裕層に向けて、プロモーションを強化していきたいと考えているところであり、今後もますます目の離せない市場の一つであることは間違いないだろう。