【日本政府観光局インバウンド最新リポート 49】旅行大国ドイツの訪日市場 JNTOフランクフルト事務所 今崎芙美次長


トレンド入りの鍵は”新鮮さ”

 ドイツ人は旅行好き、そんなイメージがある。確かに、世界観光機関(UNWTO)によると、2016年のドイツ人出国者数は9097万人で、中国の1億3千万人に次いで世界第2位の規模だ。昨年度、ドイツ国内で開催された国際旅行博でJNTOが行った一般来場者向けアンケートでも、これまでに20回以上海外旅行へ出掛けたと回答したドイツ人が全体の約6割を占めた。

 彼らはどこへ旅行するのだろう。ドイツの研究機関FURの調査によれば、18年に5日以上の休暇旅行をした14歳以上のドイツ人は7010万人とされている。行き先は、ドイツ国内・ヨーロッパ・地中海周辺国が全体の90%を占める。旅行の価値を何に見いだすかという質問には「リラクゼーション」(77%・複数回答/18年)、旅先で最も思い出に残ったことは「良い天候」(73%・複数回答/17年)、との回答が最も多い。彼らはリラクゼーションを求め、気候の良い近隣諸国へ頻繁に旅行するのである。

 日本を含むロングホール旅行のシェアは8%に過ぎないが、アジアではタイが旅行先として人気で、18年は89万人のドイツ人が訪れている。これは同年の訪日数、22万人のおよそ4倍である。

 どうしたら日本を選んでもらえるか。当地で日本が旅先の候補に挙がらない理由を聞くと、言語(英語が通じない)や旅行費用の高さといった要因が挙げられることが多い。訪日旅行に関する正しい情報を伝えるとともに、こうした障壁を乗り越えてでも訪れる価値があると認識してもらう必要がある。

 当所では昨年度、認知度向上事業の一環として、ドイツ人女優ヤニーナ・ウーゼさん(29歳)を日本へ招請した。彼女はドイツの国民的ドラマに出演し、若者向けライフスタイル雑誌の表紙を飾るなど、当地で最も影響力のあるインフルエンサーの一人で、160万人を超えるフォロワーに向けて彼女の訪日旅行の様子をSNSで発信したのだ。このキャンペーン前後で、どれだけオンライン上で訪日旅行関連のキーワードが検索されたかを比較したところ、検索数が72%増加したことが分かった。

 さらに、彼女のSNS投稿に対し「日本へ行ってみたい!」と反応したのは一般のファンだけではなく、ドイツサッカー界のスター選手ジェローム・ボアテングさん(バイエルン・ミュンヘン所属)も「素晴らしい旅行だ」とコメントを残すなど、他のインフルエンサーにも日本を旅先として印象付けることができた。

 メディアやインフルエンサーは、自分たちのファンに新たな体験を提示していかなければならない。そこで、まだドイツで定番になりきっていない訪日旅行は、新鮮味を与えるコンテンツであるはずだ。ただし、目新しいものへ簡単に飛びつかないのがドイツ人。日本ならではの体験にはどのようなものがあって、そこにはどんな背景があるのか、ストーリーテリングを意識し、訪日旅行に価値を見いだしてくれるドイツ人を増やしていくことに尽力していく。

 
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