【日本政府観光局インバウンド最新リポート 51】豪州からの訪日旅行 JNTOシドニー事務所 田中麻里香次長


情報発信で開拓に余地

 日本政府観光局(JNTO)では、豪州からの訪日教育旅行の誘致に取り組んでいる。「教育旅行」と聞くと、日本の修学旅行のようなイメージを想像されると思うが、豪州からの訪日教育旅行はそれとは様相が異なる。今回は豪州からの訪日教育旅行の概況と市場の可能性について述べていきたい。

 文部科学省による調査「平成27年度高等学校等における国際交流等の状況について」によると、学校訪問を伴う外国からの教育旅行の受け入れ人数が、高校では豪州は3143人で第4位(1位台湾、2位中国、3位韓国)、中学校では1602人で第4位、小学校では959人で第5位であった。豪州からは学校訪問を行わない教育旅行も実施されているので、前述の数値以上に多くの訪日教育旅行が催行されていることが推測される。豪州で訪日教育旅行が盛んに行われている理由としては、世界で第4番目に日本語学習者が多いこと(※)、姉妹校が多く、特に高等学校における提携数は世界で第1位であることなど、日本と豪州が築いてきた良好な関係によると考えられる。

 JNTOの調査によると、豪州からの訪日教育旅行の特徴は次の4点である。(1)2年に1回実施される傾向があり、催行時期は9月、次いで4月が多い(2)行程はゴールデンルート(東京―関西+広島)に、姉妹校がある都市を加える(3)学校交流を希望することが多い(4)日本語クラス単位で催行されることが多い。

 ここで、JNTOの豪州における訪日教育旅行市場へのアプローチ事例をご紹介したい。まず重要なのは、現場の教師への情報提供とサポートであり、JNTOは定期的に教師対象のセミナーを開催している。現場の教師が訪日教育旅行催行の中心的役割を担うため、彼らに意義を訴え、さらに日本の基本情報や最新情報を発信することで、催行意欲を上げることが肝要である。セミナーでは訪問地の地方分散も促している。また、現在の訪日者の中心となっている日本語学習者のグループのみならず、STEM(Science、Technology、Engineering、Mathematics)、音楽、スポーツなどを学ぶ生徒の誘致にも力を入れており、セミナーには日本語以外の教科の教師の参加も促している。

 さらに、学校の運営方針決定に大きな影響力を持つ校長や教育機関の方々に訪日教育旅行の意義や魅力を知っていただき、各コミュニティでその知見を広めていただくことも重要であるため、校長や教育機関関係者向けの招請事業も行っている。2019年2月には東京都、群馬県、静岡県、京都府、広島県を訪れた。
 豪州からの訪日教育旅行については現時点で好条件がそろっている上に開拓の余地もある。引き続きアプローチを続け、さらに促進していきたい。

 ※出典 独立行政法人国際交流基金『海外の日本語教育の現状:2015年度 日本語教育機関調査』
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