【日本政府観光局インバウンド最新リポート 54】英国の訪日市場 JNTOロンドン事務所 直井辰徳 次長


ラグビーW杯、五輪で機運上昇

 ブレクジット(EU脱退)が目前に迫った英国。大手旅行会社の株価の動向や、旅行業界への影響が注目される昨今だが、英国国家統計局の発表では2018年の英国から海外への渡航者数は17年に比べ1%の微減となっているものの継続して7千万人を超えており、旺盛なホリデイ需要は健在だ。訪日旅行客数についても19年1月から8月までで対前年比9.5%増と堅調を維持している。

 加えて、ADARA社が発表したラグビーワールドカップ2019(RWC2019)開催期間におけるフライト予約データを基にした分析では、訪日旅行客数全体に占める主要出場国からの訪日旅行客の割合は通常、全体の5~20%であるところ、大会期間中は50%まで伸びるとされており、ラグビー大国である英国からの訪日旅行客数の増加が見込まれている。

 RWC2019の日本開催に伴い現地旅行会社、メディアなどさまざまな団体が主催するラグビーイベントが英国各地で開催されており、当事務所のトラベルコーナーにもワールドカップを目当てに訪日する旅行者が日本の観光情報を求めて来所することが日増しに増えている。開催地周辺の情報に加え、せっかくの訪日機会を生かそうと、開催地以外の観光地情報の問い合わせを受けることも多く、英国でのワールドカップ熱と観光への相乗効果を感じるところだ。

 幸運にも続けてスポーツのメガイベント開催地となる日本だが、オリンピック・パラリンピックへの関心も英国では非常に高い。英国では陸上競技、競泳が人気で、自国開催であった12年のロンドンオリンピック時のように現場で臨場感ある体験をもう一度したいと考えている人も多いようだ。

 当事務所で行った独自調査では、オリンピック時に訪日を考えている層について、当然、主目的はオリンピック観戦になるのだが、そのうちおよそ7割は2週間以上の滞在を検討、大多数が家族あるいはパートナーと一緒に来日すると回答した。また、回答者のおよそ半数がオリンピックの観戦以外に観光も一緒に楽しむことを目的にしているという結果が出ている。

 訪日旅行への追い風が続く中、英国旅行業協会(ABTA)の年次総会である「The Travel Convention」が10月に東京で開催され、多数の英国旅行業界関係者の来日が見込まれている。JNTOも誘致段階から関わり、総会開催に当たっては参加者に日本各地を視察してもらうファムツアーの実施を予定している。また総会に先立って昨年末に発表された「ABTA Travel Trend 2019」において、日本は注目すべき12の旅行先にも選ばれ、今後さらに日本行き商品が造成されることを期待しているところだ。

 英国市場は依然として訪日旅行客の4分の3が初訪日、FITが約9割を占めており、主要な訪問先もゴールデンルートに集中しているが、昨今では四国や東北といったゴールデンルート以外の観光地がメディアに取り上げられることも増えてきている。政治的な先行きは不透明な部分も大きい英国だが、ワールドカップ、オリンピックで盛り上がった訪日機運を活用したプロモーションを引き続き事務所としても展開していきたい。

 
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